その事故は、自分の敷地の外で人を止める
設備が壊れることより、他人の一日が止まることのほうが重い。

キュービクルの中で起きた事故が、自分の敷地だけで収まらないことがある。電力会社の配電線をまとめて落として、同じ線にぶら下がっている工場や店や病院まで巻き込む。これが波及事故だ。
技術的に言えば「区分開閉器が切れる前に、上位の遮断器が動いた」。それだけの話でしかない。でも現実に起きるのは、隣町のスーパーのレジが止まって、信号のない交差点ができて、透析中の病院が非常電源に切り替わる、という事態だ。自分の設備が壊れたことなんかより、そっちのほうがずっと重い。
事故を起こすと24時間以内に速報、30日以内に詳報がいる。書類の話に聞こえるかもしれない。けど本当にきついのはその前だ。「なぜ防げなかったのか」を自分の言葉で説明する場面が、必ず来る。そこで何を答えるか。事故が起きてから考えることじゃないと思っている。
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波及事故とは?意味、原因、事例
定義、報告義務、原因の内訳まで一枚で押さえられる。最初に読むならここから。
波及事故とは? 自家用電気工作物の事故等により電力会社の配電線のフィーダを停電させ、 同一のフィーダに接続されている他の電気使用者への電力供給ができなくなる事故のこと。 波及事故を発生させた場合の対応・義務 ■速報 事故…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))再閉路とは?意味、原因
事故のとき電力会社側で何が起きているか。自分の設備の外側を知る回。
再閉路とは? 送電線や配電線に落雷などの事故が発生すると、配電側(電力会社側)の保護リレーが動作する。 そして配電側の遮断器が開放され、ある一定の地域が停電状態となる。 そして一定の時間で自動的に遮断器が再投入され、切り…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))地絡によりPASトリップ
実際に起きた一日の記録。時刻順に判断が並んでいるので、流れがそのまま追える。
6/4 13:11 PASトリップ SOG「G」表示 13:40 工場より全停電の連絡 ・変電所:V01検出無し ・中国電力ネットワーク(株)配電線の地絡検出機能付き開閉器:地絡検出(繰り返しの微地絡発生) ・14:20…
続きを読む(電気管理技術者の交流掲示板)責任の境界は、思っているより手前にある
電柱の上の一台が、自分の担当かどうか。

責任分界点。契約書の中の言葉に見えて、実際は「どこから先が自分の責任か」という毎日の判断そのものだ。たいていの現場は第一柱のPAS(気中開閉器)が境界になる。ただ地域によっては、電力会社の柱に電力会社がPASを付ける形もある。関西でよく見る出迎え方式ってやつだ。
この違いを知らないまま点検していると、「自分の担当じゃないと思っていた機器が、実は自分の側だった」が起きる。地中引込ならPASじゃなくUGSだし、接地の種別ひとつ取っても、過去の成績書がそのまま正しいとは限らない。
境界を確認するのは、責任を減らすためじゃない。自分がどこまで守れるのかを知るためだ。守れる範囲を正確に知っている人だけが、その範囲を実際に守れる。
この章で読みたい記事(4本)
PAS 高圧気中負荷開閉器とは?役割、配線図、事故事例
銘板の読み方から事故事例まで。PASを一つ理解するならこの記事。
PAS 高圧気中負荷開閉器 イラスト 実物写真 本体裏面 300:定格電流300A 10.12=製造日:2010年12月 塩:耐塩型 VT:VT内蔵 LA:避雷器内蔵 文字の色:橙⇒鋼板製、青⇒ステンレス製 A:気中開閉…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))関西地方に多い「出迎え方式」とは?デメリット・波及事故・責任分界点
責任の境界が普通と違う地域がある。自分の担当がどちらか確認する材料。
出迎え方式とは? 電力会社の電柱に、電力会社がPASを設置する。 そのPASの二次側に、需要家のケーブルを接続する。 責任分界点は、PAS2次側のリード線と需要家側ケーブル接続部。 接続点の接続工事は、電力会社が行う。…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))UGS 地中線用高圧交流ガス開閉器とは?役割、PASとの違い
地中引込の現場はPASではなくUGS。違いを一度整理しておきたい。
UGS 地中線用負荷開閉器 UGSとは、英語で、Underground Gas Switch 開閉器内にSF6(六フッ化硫黄)を封入して絶縁を保っている。 UGS 外観 VT内蔵タイプ・VT無しタイプの違い UGSには、…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))【PASの接地抵抗について】SOG制御装置のZ2接地抵抗種別はA種?D種?
現役技術者からの質問に、根拠を示して答えている。判断の筋道が読める。
サイト経由で、 某電気保安法人所属の技術者から こんな質問が届きました。 質問者 【PASの接地抵抗について】 戸上製PAS[LTR-P-D]VT・LA非内蔵の標準タイプがついている需要家の年次点検にて、過去データでZ2…
続きを読む(とある電気管理の位相)事故は、いきなり起きたことにされる
突然に見えるのは、見ていなかった時間があるから。

波及事故の報告を読むと、たいてい「突然」と書いてある。でも絶縁が、ある朝いきなりゼロになるわけがない。動作値に届かない小さな地絡が、何日も何週間も前から出ていることがある。微地絡というやつだ。
月イチの点検で見られるのは、その日の数分だけ。その間を埋めるのが絶縁監視装置で、朝の通報が実際に事故の芽を捕まえた記録も残っている。ただ、付けただけじゃ意味がない。動作値の試験をやって初めて「設定が狂っていた」と分かった例もある。
「異常なし」と書いた報告書が積み上がるほど、その現場は安全になっていく——なんてことはない。異常なしというのは、見た範囲で見つからなかった、それだけの意味だ。ここを混同しないことが、この仕事の入口だと思っている。
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微地絡
事故は突然ではない。まず予兆の名前を知っておく。
微地絡 零相電圧(Vo)や零相電流(Io)が地絡動作設定値に至らないレベルの地絡や継続時間が短く地絡動作に至らない地絡のこと。 初期段階では大きな事故につながらないことが多い。 放置すると絶縁破壊が進行して大規模な地絡事…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))CHZ形(高圧絶縁監視機能付方向性SOG制御装置)
予兆を記録できる装置。導入して意味があるかまで書かれている。
CHZ形 微地絡検出 SOG制御装置がGR動作に至る前の予兆である「微地絡」を検出。 接点出力、微地絡検出、確定時の計測瞬時値、日時を本器に保存(微地絡ログ) 本体にはUSBコネクタがありパソコンと接続しデータを回収でき…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))絶縁監視装置とは?設置基準、仕組み、メリット
点検と点検の間を埋める装置。仕組みと設置基準。
絶縁監視装置とは? 高圧受電設備は、通常は毎月点検することが義務つけられている。 絶縁監視装置を取り付けると点検頻度を隔月(2ヶ月に1回)に緩和できる。 絶縁監視装置とは下記の異常を感知し通知できる装置のこと。 ・トラン…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))モーター内部地絡事故で絶縁監視装置通報
朝7時の通報から原因特定まで。装置が実際に何を知らせてくるかが分かる。
今朝、7時前に絶縁監視装置からの漏電通報がありました。 動力変圧器のIorが1A超えです。他の変圧器も引きずられてIorが増大しこちらも警報がありました。 1A超えでは放っておくわけにいきません。即、緊急出動することとし…
続きを読む(Denkikanri3y's Blog)絶縁監視装置 動作値不良?
付けただけでは意味がない。試験して初めて見つかった動作値不良の記録。
年次点検で 停電中にIo絶縁監視装置の 動作値試験をおこないました。 監視王Io | ムサシインテック 電灯2バンク、動力1バンクの 3ch使用しているのですが、 そのうちの1チャンネルだけ 50mA設定のはずが 70m…
続きを読む(とある電気管理の位相)見えない場所で、時間が進んでいる
相手は事故ではなく、年月。

高圧ケーブルの中では、水トリーが何年もかけて絶縁体を進んでいく。外から見て分かるもんじゃない。目視点検では絶対に見つけられない相手が、確実にいるということだ。
雷は逆に、一瞬で答えを出してくる。直撃を食らったPASがどう壊れて、どこまで波及するのか。夜に停電のメールが来て、翌朝の現場で電柱の上を切り離す。そういう記録を読んでおくと、自分の現場で同じことが起きたときの初動が変わる。
避雷器を内蔵するかどうかも、地域で考え方が違う。全国一律の正解がないものを、自分の担当地域の条件に合わせて決める。それが判断するということだと思う。
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水トリー現象とは?
ケーブルの中で何年もかけて進む劣化。目視では分からない相手の正体。
水トリーとは? 水トリー(みずトリー、water tree) 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CVケーブル)の絶縁層内に侵入した微量の水分や異物が、時間経過により絶縁体の中に浸透し、絶縁劣化を経て絶縁破壊する現…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))直撃雷でPASが焼損、PASが導通、LBSのPF溶断、電灯電圧計が爆発
雷の一撃で何がどの順に壊れるか。現場の状況が順を追って書かれている。
直撃雷でPASが焼損 ※ネット上の情報を元にまとめてみた。 現場状況 雷による異常電圧でLBSのPFが溶断して停電状態となった。 電灯盤の電圧計が爆発していた。 PASをヒモにて手動開放。 高圧検電器で三相無電圧を確認後…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))落雷の事故、またまた雷にやられました
夜20時の停電メールから翌朝の調査まで。実際の出動記録。
先週の末、午後20時ころ停電のメールが来ました・・ 25kmほど離れているので雷情報を確認すると・・・・その付近は半径15kmほどがまっ赤っか 電力さんも確認に出られたとのことで、立ち合いで調査です(こちらの出動は管理者…
続きを読む(二つの顔を持つ男)LA避雷器内蔵PAS・単独接地と共用接地の違い
雷への備えは地域で違う。内蔵LAが推奨されない地域もある。
LA(避雷器)内蔵PAS PAS内蔵タイプのLA 定格電圧:8.4kV 公称放電電流:2500A 動作開始電圧:17kV以上(波高値) 制限電圧:36kV以下 定格周波数:50/60Hz 特性要素およびギャップ:ZnO素…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))いちばん近い事故要因は、自分の手元にある
設備は勝手には壊れない。壊してしまうことがある。

これがいちばん書きにくい章だ。波及事故の原因には、点検に入った人間の作業そのものが入っている。アースフックを外し忘れて復電した。接地抵抗計のリードを一本違う端子に繋いだ。試験のために外した配線を戻し忘れた。どれも、ベテランがやっている。
中でも重いのが判断のミスだ。地絡でPASが切れたあと、1000Vのメガーで測って異常なしと出た。それで投入したら、また落ちて、今度は地域を巻き込んだ。測定電圧の選択という、ほんの短い判断が結果を分けている。
こういう話を読むのは気持ちのいいもんじゃない。それでも、他人の失敗を先に知っておくのが、いちばん安く済む予防だ。書いて公開してくれた人がいるから読める。そこは忘れずにいたい。
この章で読みたい記事(6本)
PASのSOGがGR動作でPAS開放、絶縁抵抗測定で異常なし、PAS投入で再び地絡、波及事故
判断ミスがそのまま波及事故になった例。測定電圧の選択が結果を分けている。
波及事故の例 PASのSOGがGR動作でPAS開放。 停電確認、放電、1000Vメガで絶縁抵抗測定したら異常なし。 PASを投入したら再びGR動作でPAS開放。 地域停電を引き起こして波及事故。 対策方法 1000Vメガ…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))アースフックの取り外し忘れで復電し短絡事故⇒波及事故
アースフックの外し忘れ。誰にでも起こりうる手順の抜け。
アースフックの取り外し忘れで復電し短絡事故⇒波及事故 アースフックを断路器1次側に取り付けたまま復電したので短絡電流が発生。 短絡電流によりアースフックと断路器1次側が溶着した。 PASやUGSのSO動作が正常に機能すれ…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))停電前の接地抵抗計測定でSOGが動作しPASが開放
測定器のリード1本の間違いで受電が落ちる。勘違いの怖さ。
停電前の接地抵抗計測定によりSOGが動作しPASが開放 事故例 PAS投入状態の受電中、A種接地抵抗測定のため、SOGのZ2で接地測定を行おうとした。 接地抵抗計のEをSOGのZ2に接続するはずが、勘違いをしてSOGのZ…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))PASのSOG試験、P1P2配線戻し忘れ、P1P2短絡でVT焼損
復旧作業そのものが次の事故の種になる。写真を撮る習慣の理由がここにある。
PASのSOG、P1P2の配線を戻し忘れ復電し、P1P2が短絡してしまった場合 PASのSOG、P1P2配線戻し忘れ、そのまま復電してしまった場合にP1P2が短絡すると、VT2次側に大きな電流が流れ、PAS内蔵VTが焼損…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))変圧器の低圧側にAC電圧を印加し昇圧(電気事故)
「停電しているから安全」が成立しない場面。低圧側から高圧が現れる。
変圧器の昇圧(電気事故) 条件 PAS、VCB、LBS等すべて開放で全館停電状態の高圧受電設備。 単相3線式の変圧器2次側のR-S間に110Vの電圧を印加した。 さて、どのような現象が発生するか? 予想 変圧器R-S間の…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))SOGの不必要動作(誤作動)
自分のせいではない開放もある。切り分けのための材料。
SOG制御装置の不必要動作(誤作動) 事故事例1 SOG内部の電子部品の故障(コンデンサの液漏れ) 制御装置内部の絶縁が低下⇒不必要動作⇒PAS開放 SOG制御線の増設可能ケーブル亘長と公称断面積は制限がある。 不必要動…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))「合格」と書いた紙は、事故を止めない
試験は目的ではなく、確認の手段。

継電器試験に合格していても波及事故は起きる。整定が上位と協調していなければ、自分の開閉器より先に電力会社側が動くからだ。電流の値じゃなく、動作時間で協調をとる。この一点を分かっているかどうかで、成績書の意味がまるで変わる。
試験をどこまでやるかも、現場ごとに幅がある。全タップ流すのか、整定値だけか。竣工と更新で何を変えるのか。正解は一つじゃない。ただ、自分がどの基準でやっているかを説明できることは要る。
そもそも整定値そのものが、人工地絡試験という実測から決められている。数字は誰かが机の上で決めたものじゃなく、実際に地絡させて確かめた結果だ。それを知ると、試験は「通すもの」から「確かめるもの」に変わる。
この章で読みたい記事(5本)
地絡継電器の保護協調と慣性特性
整定が上位と協調していなければ、試験に合格していても波及は防げない。核心の記事。
地絡継電器と保護協調 ※UGSやPASなどの整定値を変更する際は必ず事前に電力会社へ問い合わせる。 整定値の設定ミスで需要設備のSOGが動作する前に配電用変電所のGRが動作した例あり。 ⇒ 詳細はこちら 地絡保護継電器の…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))竣工検査や交換工事においてDGRやSOGの試験内容は?
「どこまでやるか」を3パターンで比較している。自分の基準を決める材料。
竣工検査や交換工事でSOGやDGRの試験はどこまでやる? 試験項目 ・最小動作電圧値 ・最小動作電流値 ・動作時間値 ・位相特性試験 ・慣性特性試験 ・遮断器連動試験 パターン1 「電圧以外は全部やる」 ・整定電圧 5%…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))地絡方向継電器の判定基準
動作電流値・動作時間の判定基準。手元に置いておく用。
地絡継電器 判定基準 ■動作電流値 整定値の±10% 例:0.2A整定⇒0.18A~0.22Aの範囲 ■動作時間 試験方法 ①整定値の130%[A]を流す 瞬時整定:判定基準なし 0.2s整定:0.1~0.3sで動作する…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))人工地絡試験
整定値がどう決められたのか、その根拠になる試験。
人工地絡試験とは? 配電用変圧器2次側の高圧母線に接地棒を接触させ、実際の地絡事故を人工的に作り出す。 この試験で、地絡抵抗(6kΩ)で地絡リレーが動作する零相電圧V0、零相電流I0の整定値を決める。 地絡リレーの動作判…
続きを読む(でんきメモ (memo-labo))人口地絡試験(絶縁監視装置試験ですけど・・・)
受電後に可変抵抗で実際に試した記録。試験を自作している人の工夫。
早朝年次点検を 3名で実施。 作業終了し受電後ブレーカー投入前に 絶縁監視装置を 可変抵抗による人口地絡で試験。 とある電気管理の位相転移〜フェイ… Ior絶縁監視装置用試験器の作成 | とある電気管理の位相転移〜フェイ…
続きを読む(とある電気管理の位相)なぜ、このサイトがこれを集めているのか
ここに並べた記事は、どれも一人の技術者が自分の時間を使って書いたものだ。 失敗も、判断に迷ったことも、書けば誰かに読まれると分かったうえで公開されている。
その記録が、検索でうまく見つからないまま埋もれていくのはもったいない。 このサイトは、それを横断して探せるようにするためだけに作った。 読む場所は、いつでも書いた人のところだ。