現場の記事から作った解説

高圧の地絡電流は何A流れる?GR整定0.2Aともらい事故

公開 2026年9月15日出典 12(うち動画 1本)サイト監修:本田電気管理事務所
結論

高圧の一線地絡電流は配電用変電所のバンクごとに違い、地絡継電器の規格上は30A以下として扱われます[1]。国内の6kV配電系統は非接地方式で、継電器に流れる電流は変電所EVTの抵抗分と電路の対地静電容量分に分かれます[1][2]。構内事故では、ZCTは系統側(ZCTの電源側)の対地静電容量とEVTから供給される地絡電流を検出します[1]。一方、構内ケーブルの対地静電容量による充電電流は外部事故のときZCTを通過するため、整定値はこの充電電流に埋もれない値として0.2A・0.4Aが選ばれ、同じ理屈で他需要家の地絡でも自分のGRが動く「もらい事故」が起こります[3][4]

高圧の地絡電流の大きさは何で決まるか

6kV配電系統では非接地方式が採られ、配電用変電所のEVTの制限抵抗を一次側に換算して高抵抗接地方式と呼ぶ考え方もあります[1]。四国電力管内と北陸電力管内の一部では消弧リアクトル接地方式が採用されているとされ、DGRの動作位相も非接地系の遅れ30度に対しリアクトル接地系は遅れ60度と変わります[1][2]。一線地絡電流はバンクごとに異なり、継電器の規格上の上限は30A以下です[1]

電流の道筋はZCTの原理そのものです。1相が地絡すると大地に電流が流れ、その電流は健全相の対地静電容量を通って電路に入り、変圧器の一次巻線を経て事故点へ戻るループを作ります[5]。三相の合成がゼロでなくなった分をZCTの鉄心と巻線が検出し、二次のk・l端子に出力します[5]。零相電流検出用のZCTは定格零相一次電流200mA、二次1.5mAが標準的な値です[5]

DGRに流れる電流は、変電所EVTの抵抗分とケーブルの静電容量分でおよそ二分されます[2]。EVTの抵抗は固定ですが、静電容量分はケーブルの長さと種類で変わるため、設備ごとに位相条件が変わります[2]。構内に3kVへ降圧する変圧器を置いた場合、3kV回路側には地絡電流を供給できるだけの対地静電容量がないため、接地補償用コンデンサを設置します[1]

整定0.2A・0.4Aがその値になる理由

GRの電流整定は通常0.2Aで、検出感度が良すぎて微弱電流で動いてしまう現場では0.4Aに上げます[3]。0.6A以上にすると配電用変電所の保護範囲と接近して保護協調が崩れる可能性があるため、電力会社との相談が前提になります[3]。つまり0.2Aと0.4Aは、構内の充電電流に埋もれない下限と、上位保護に踏み込まない上限の間に置かれた値です。

目安として、構内充電電流が50mA以下なら200mA、50〜100mAなら400mA、100mAを超えるなら600mAという選び方が示されています[3]。6kV CVT100sqの構内高圧ケーブルが124m以上あるとIg(充電電流)は200mA以上となり、200mA整定のままでは電源側の地絡で不必要動作する可能性があります[3]。充電電流が200mA以上になるとGR方式ではもらい動作が起こり得るという整理です[3]

DGRでは零相電流0.2A、零相電圧5%、動作時間0.2秒が標準で、系統の残留分でV0検出のLEDが点灯する場合は7.5%以上に上げます[2]。動作時間は単回線・多回線フィーダで0.2秒、多回線の母線用では0.4秒以上とする場合もあり、現場や系統構成によって判断が分かれます[2]。いずれも配電用変電所の継電器との協調が最重要項目で、電力会社との協議が必要とされています[2][3]

現場の実例 もらい事故でLBSが開いた

モールドジスコンにLBSとGRを組み合わせた需要家で、LBSが開放し一次側だけ受電状態、GRのターゲットが動作していたという事例があります[4]。LBS二次側の絶縁抵抗は良好で、GRのリレー試験も連動試験も正常でした[4]。構内に事故点が見つからないという、判断に困る典型的な状況です。

結論は、近隣の建物で起きた高圧地絡の電流の一部が大地を回り込んで自社側に入り、構内の対地静電容量から母線を経てZCTを抜け、外部へ抜けていったというものでした[4]。その通過電流をGRが零相電流として検出し、LBSを開放させて構内が停電したと推測されています[4]。もらい事故の起こりやすさは、構内が持つ対地静電容量の大きさで決まります。その大半を占めるのが高圧ケーブルなので、ケーブルが長く太い設備ほど通過電流が大きくなり、逆に短く細ければリスクは下がります[4]

GRはDGRと違ってV0要素を持たず方向も見ないため、零相電流の大きさだけで動作します[6]。DGRは構内事故のときだけ動くので、もらい事故の危険がありません[2]。配電系統のどこかで地絡すると、発生する零相電圧のベクトルは構内事故でも外部事故でも同じですが、ZCTに流れる零相電流の向きは内外で変わります[1]。この位相差から内部か外部かを判定するのがDGRの役割です[1]

地絡電流に見えて地絡ではない動作

2変送りケーブルのGRが動作してLBSが開き、メガーもケーブルシースの絶縁も異常なし、しかし復電すると再び動作したという例があります[7]。このとき挙がった確認先は、電力会社へのV0検知の有無の問い合わせ(地絡があれば方向性の有無に関係なくV0は出ているはず)、シースアースの両端接地を片端接地へ修正、GR本体の単体試験、LBSトリップコイルの抵抗値と絶縁抵抗、ZCT二次k・lの接地方法でした[7]。V0は微地絡・中地絡・重地絡の3段階で検知しているとされますが、地域差があるとも書かれています[7]

GRの不必要動作の要因としては、ケーブル接地工事の不適切、誘導障害、電波障害、構外地絡による構内対地静電容量ぶんの零相電流、雷サージ、最小動作電流の低下、慣性特性不良、継電器の絶縁不良などが挙げられています[6]。雷サージは商用周波の地絡電流とは波形も周波数も違いますが、継電器から見れば同じ零相電流として現れるため切り分けが難しく、直撃ではない誘導雷で構内に被害が残らないままDGRだけが動作することがあり、この場合は継電器の不良ではないと整理されています[6]。単相回路やSVRで対地静電容量や対地電圧が不平衡だと、地絡がなくても残留電圧としてV0が常時出ます[6]

配線側の要因も無視できません。信号源の接地は1点が基本で、ZCTのK側とL側の2点でシールド層を接地すると電位差で電流が流れIoランプが点灯します[8]。GRはZCTのl端子1点、DGRはZPCの二次Y2端子1点で接地します[8]。しゃ断器の三相投入不揃いも見かけ上の零相電流になるため、JIS C 4601では整定値の400%を50ms通電しても動作しないことが求められ、投入不揃いは50ms以下に抑えます[8]

測定値の読み方にも癖があります。接地線の微小電流はリーククランプで測れますが、波形まで見るには相応のオシロが要ります[9]。盤接地線の電圧波形は漏れ電流と接地抵抗の積なので電流波形と同じ形になり、実測ではkHz単位の成分が乗っていました[9]。この成分はLPFを有効にすると落ち、無効にすると加算されて指示値が上がります[9]

逆に動かないパターンと動作後の探査

給電盤が2枚あり、それぞれDGRを持つ現場で、1台目は良好、2台目がV0を印加しても動かないという事例があります[10]。電圧表示が点灯しないことに気付き、ZPDは1台で共通、Y1-Y2は1台目のDGRから渡り線で2台目へ渡っている構成だったため、テスターで導通を当てるとY2の渡り線が不導通でした[10]。試験器のテストリードで双方のY2を仮につないで再試験すると正常動作し、断線と確定しました[10]。点検時間の都合で断線箇所の追跡はせず、不良として報告する対応になっています[10]

実際にトリップした側の例では、PASがSOGのG動作で開放し、PAS二次〜VCT〜高圧ケーブル間の絶縁抵抗が8kΩでした[11]。絶縁耐力試験を行っても2,000V以上に電圧が上がらず、ケーブルの絶縁抵抗測定などからPASが疑われています[11]。2.5kA避雷器内蔵のPASが事故原因になるケースは多く、波及事故も多いと指摘されています[11]

事故点の探査は、商用電源による試充電や絶縁耐力試験など複数の方法から選ぶことになります[12]。高圧ケーブル不良では全長を半分に切り分けて良否を判断した例もあり、一度で絞り込む工夫が課題として挙げられています[12]。継電器試験の項目や手順は保安規程や年次点検の作業要領書で少しずつ違います[1]。一般に、停電・検電・接地の可否や作業の進め方は、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。

現場で確かめること

  • 構内高圧ケーブルの種類と長さから充電電流を見積もり、GR整定0.2A/0.4Aの妥当性を確認する
  • ZCT二次の接地がGRはl端子1点、DGRはZPC側Y2の1点になっているか
  • ケーブルシースアースが両端接地になっていないか、片端接地か
  • 複数DGRの渡り線(Y1-Y2、M-N)の導通をテスターで当たる
  • GR動作後は電力会社にV0の検知有無と時刻を確認する
  • トリップコイルの抵抗値・絶縁抵抗と、LBS補助スイッチの有無を確認する

実際の作業は、各事業場の保安規程・作業手順書と、有資格者の判断に従ってください。

よくある質問

Q.高圧の一線地絡電流は最大で何アンペアですか

A.配電用変電所のバンクごとに異なり、地絡継電器の規格上は30A以下として扱われます[1]。電流は変電所EVTの抵抗分と電路の対地静電容量分でおよそ二分され、ケーブルの長さや種類で静電容量分が変わります[2]

Q.GRの整定を0.2Aから0.4Aに上げてもよいですか

A.感度が良すぎて微弱な電流でも動いてしまう現場では、0.4Aへの変更が選択肢として挙げられています[3]。ただし0.6A以上は上位にある配電用変電所側の保護と範囲が重なり、協調が崩れるおそれがあるため、電力会社への相談が前提になります[3]。構内充電電流が50〜100mAの範囲なら400mAという目安も示されています[3]

Q.もらい事故を防ぐにはどうすればよいですか

A.GRは零相電流の大きさだけを見るため、事故が構内か構外かを判別できません。DGRは零相電圧と零相電流の位相関係から、構内事故に限って動作します[2][1]。構内の充電電流が200mAを超えるとGR方式では電源側の事故で動く可能性があり、ケーブルが短く細い設備ほど確率は下がります[3][4]

Q.雷の後にDGRだけが動作していました。故障ですか

A.雷サージは地絡電流と見分けにくく、不必要動作の要因の一つに挙げられています[6]。誘導雷であれば構内に被害が残らないままDGRだけが動作することがあり、その状態は継電器の故障ではないと整理されています[6]。本文の「地絡電流に見えて地絡ではない動作」もあわせて確認してください。

Q.GRが動いたのに絶縁抵抗は良好でした。次に何を見ますか

A.電力会社へのV0検知の確認、シースアースの両端接地の有無、GR本体の単体試験、トリップコイルの抵抗値と絶縁抵抗、ZCT二次の接地方法が挙げられています[7]。多点接地や二次配線への誘導でIoランプが点灯することもあるため、接地が1点になっているかを確かめます[8]。構外の地絡による通過電流だった可能性も残ります[4][6]

出典(このページのもとにした記事・動画)

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  1. [1]方向性地絡継電器用試験器 GCR-miniぽんぽんタイガー(YouTube) / 2021年12月10日
  2. [2]地絡方向継電器 67 原理、目的、試験方法、整定値でんきメモ (memo-labo)
  3. [3]GR 地絡継電器 原理、目的、試験方法、整定値、設置基準でんきメモ (memo-labo)
  4. [4]もらい事故・他需要家の地絡事故でケーブル対地静電容量による電流でGR動作でんきメモ (memo-labo)
  5. [5]ZCT 零相変流器とは?仕組み、配線、選定でんきメモ (memo-labo) / 2007年1月1日
  6. [6]方向地絡継電器の事故・トラブルでんきメモ (memo-labo)
  7. [7]送りケーブルのGRが動作しLBS解放。原因は?でんきメモ (memo-labo)
  8. [8]多点接地、循環電流による地絡継電器の誤動作でんきメモ (memo-labo) / 2013年1月1日
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