モーターのメガーが0MΩ近くまで落ちている場合は、巻線の内部で地絡や短絡が起きている可能性があり、運転を続けるかどうかの前に回路を切り離した単独測定が必要です[1]。ただし動力盤の一点で低い値が出ただけでは、原因がモーター本体か電源ケーブル側かは決まらず、実際にケーブル損傷や盤内の水気が原因だった例もあります[2][3]。モーター交換は工賃込みで100万円を超えることが多く、切り分けを誤れば費用の責任問題になります[4]。停電や検電、接地を伴う調査は、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
まず巻線側かケーブル側かを切り分ける
動力盤の測定点で絶縁不良を見つけたとき、原因が電源ケーブルなのかモーターそのものなのかを確かめるのは主任技術者の仕事だとされています[4]。モーター交換の費用は工賃を含めて100万円を超えることが多く、後からケーブル側が原因だったと分かれば、雇用する管理会社に対して弁償の話になりかねません[4]。お金のかかる提案ほど、測定点を分けて確定させる必要があります。
実務としては、回路を切り離してモーターのコイル単独でメガーを当てます[1]。モーター単体で試験する場合は、出力側のU・V・W端子の接続を外した状態にします[5]。別の現場では、制御盤のブレーカーで測って負荷側に異常がなかったことから、引込側の配線に原因があると絞り込んでいます[3]。
どこで切り離すか、停電範囲をどう取るか、検電と接地をどう扱うかは、設備ごとの手順書と有資格者の判断に従ってください。
測り方でインバータやELBを壊さない
実例 Ior1A超えの通報からモーター内部地絡と判明するまで
朝7時前に絶縁監視装置から漏電通報が入り、動力変圧器のIorが1Aを超え、他の変圧器も引きずられて警報が出た事例があります[1]。Iorが1Aを超えていたため放置できないと判断して即時出動を決め、24時間稼働の事業場で担当者がいたことから、到着前に電話して怪しい機器の調査を依頼しています[1]。
現場では制御盤のマグネットの異常が見つかっており、モーター回路の絶縁抵抗を測ると0MΩの回路がありました[1]。回路を切り離してモーターのコイルを測ると2回路が0MΩで、内部で地絡と短絡が起きていると判断されています[1]。
この機械はモーター3台で動くもので、さしあたり健全な2台で運転できないかを事業場に相談し、予備品が無かったため修理や予備品の手配をメーカーと調整することになりました[1]。到着前に現場側で不良回路の目星を付けてもらえたことが、特定の早さにつながったと振り返られています[1]。
実例 モーターは無事で、ケーブルや盤側が原因だったケース
Ior999mAの警報が出てすぐ復帰した事例では、モーター行きの電源ケーブルが損傷して芯線が潰れ、電源線と接地線が接触して短絡・地絡に至っていました[2]。破損箇所は客先で除去・修理済みでしたが、巻線抵抗や電源電圧を確認して動作させると再びサーマルが動作しました[2]。調べるとサーマルリレーの1相に導通がなく出力が欠相しており、事故時の過大電流で接点が接触不良になったと考えられ、事業場の予備品と交換して復旧しています[2]。電圧確認をサーマル出力側ではなく主接点で済ませたため発見が遅れた、という反省も残されています[2]。
年次点検で0.01MΩ以下が出た立体駐車場の回路では、追跡調査の結果、濡れた盤内の床に電線が触れていたことが原因でした[3]。電線に手を触れただけで0.01MΩが1MΩに動き、床から離すように上へ曲げると50MΩ超まで戻っています[3]。水気に起因する低下は、原因を取り除けば値が戻ることがあるということです。
測定側の要因で値が動くこともあります。1988年製のキュービクルでは、ブレーカー2次側の値が2MΩと3MΩの間で不安定に振れ、プローブをブレーカーの穴枠に触れさせるかどうかで値が変わりました[6]。250Vレンジで筐体を測ると20MΩで、ブレーカー本体の絶縁低下が合成されていたと分かっています[6]。水拭きで拭き上げてから測れば結果は違ったかもしれない、とも書かれています[6]。
この値で使い続けてよいか 判断が分かれるところ
0.1MΩや0.2MΩという値は最低値であって、健全な状態を示す値ではありません[7]。
判断材料になるのは他回路との比較です[7]。主幹がどれも10MΩ以上あるなかで1回路だけ0.12MΩなら、最低値は満たしていても違和感を持つべきだという見方です[7]。自然な経年劣化だけで1MΩを下回ることはない、とも述べられています[7]。着任した現場では正常時の値を自分で実測しておくと、比較の基準ができます[7]。
一方で、判定基準が定められていない領域の数値変化を客先に伝えても不安にさせるだけだ、という指摘もあります。高圧の変圧器で前年500MΩが今年200MΩでしたと報告し、対策を聞かれて様子見と答えるやり取りには意味がない、という見方です[8]。どこまでを報告にとどめ、どこから不良指摘にするかは、現場や設備によって判断が分かれます。
交換や修理の提案を通す場面では、着任先の各機器の取扱説明書にある保守基準に従うのが最もスムーズだとされています[4]。メーカーごとのモーター絶縁の推奨値を把握しておくことも、ビル電気担当には求められます[9]。
メガーが手元にないとき、運転状態の確認
それで不良回路を確定させた経験があるとされますが、テスターで対地間の絶縁抵抗値を管理することはできません[10]。あくまで不良の有無を当たるための手段です[10]。
スターデルタ始動の設備では、巡回点検の際に盤を開けてデルタ運転になっているかを目視で確認し、スター運転のままならモーターを早急に止めて切替タイマーを交換する、という運用があります[10]。使用15年を経過していれば、切替タイマーの全数取替が理想とも書かれています[10]。
絶縁が健全でも開閉器側が原因のことがあります。マグネット2次側からモーターまでの絶縁が100MΩありながらMCBがトリップした例では、マグネット交換で対応し、その後は問題なく使えているため業者の対応は間違いではないとされています[11]。
現場で確かめること
- 動力盤の値だけで決めず、回路を切り離してモーターのコイル単独で測る[1]
- 線間(相間)を測るときはインバータ・漏電ブレーカ・電子式電力量計を切り離す[5]
- 同じ建物の他回路と比べ、そこだけ極端に低くないかを見る[7]
- 盤内の床の濡れや、電線が造営材に触れていないかを目視する[3]
- プローブの当て方やブレーカー筐体側の絶縁低下で値が振れていないか確認する[6]
- その設備の取扱説明書にある保守基準とメーカー推奨値を確認する[4][9]
実際の作業は、各事業場の保安規程・作業手順書と、有資格者の判断に従ってください。
よくある質問
Q.モーターの絶縁が0MΩでした。運転を続けられますか
A.回路を切り離してコイル単独で測っても0MΩなら、内部で地絡・短絡が起きていると考えられ、実例では予備品や修理の手配に進んでいます[1]。3台構成のうち1台の故障だった現場では、さしあたり健全な2台での運転継続を事業場に相談しています[1]。停止か継続かの可否は、設備の手順と有資格者の判断によります。
Q.0.2MΩあれば基準を満たしているので問題ないのでは
A.0.2MΩは人間の感電を基準にした最低値で、健全な状態を表す値ではありません[7][9]。その値を放置すればいずれ地絡警報に至るとされ[9]、他回路が10MΩ以上あるなかでそこだけ低いなら、原因を追う対象になります[7]。
Q.湿気や水濡れが原因なら、乾けば値は戻りますか
A.濡れた盤内の床に電線が触れて0.01MΩ以下になっていた回路は、電線を床から離すだけで50MΩ超まで戻っています[3]。ただし被覆に傷やひび割れがあれば水気が引いても再発しうるため、CVケーブルの架橋ポリエチレンの劣化は確認しておく必要があります[3]。
出典(このページのもとにした記事・動画)
本文の [番号] はこの一覧に対応しています。詳しい経緯や写真は、書いた技術者本人のサイトでお読みください。
- [1]モーター内部地絡事故で絶縁監視装置通報Denkikanri3y's Blog / 2025年5月28日
- [2]漏電事故によりモーター電源欠相Denkikanri3y's Blog / 2025年9月11日
- [3]低圧600V CV-3Cケーブルの絶縁不良とある電気管理の位相 / 2025年11月25日
- [4]モーター絶縁不良?最終確認事項電験・電気管理(denken333) / 2019年2月22日
- [5]線間(相間)絶縁抵抗測定でELB、インバーター、電力量計が故障でんきメモ (memo-labo)
- [6]絶縁抵抗値の変動原因とある電気管理の位相 / 2026年6月10日
- [7]保安規定で定める低圧絶縁抵抗測定電験・電気管理(denken333) / 2019年2月22日
- [8]電気保安には「感謝の気持ち」しか要らない。ゆうじの「電気保安の学校」(YouTube) / 2023年7月4日
- [9]日立・三菱・エバラのモーター絶縁基準!電験・電気管理(denken333) / 2019年2月22日
- [10]テスター導通試験で対地間0MΩを感知できるのか?電験・電気管理(denken333) / 2019年2月22日
- [11]単相運転したというマグネットで遊んでみた。電験・電気管理(denken333) / 2019年2月22日
- [12]絶縁監視装置とは?設置基準、仕組み、メリットでんきメモ (memo-labo)
- [13]絶縁抵抗測定で印加電圧を間違い事故でんきメモ (memo-labo)