絶縁抵抗測定で特に避けたいのは、負荷や電子機器をつないだまま線間にメガーを当てることです[1]。高圧回路をDC1000Vメガーだけで良好と判断し、再投入後に波及事故へ至った例も続いています[2]。停電範囲を確かめずに当てた技術者は、充電部でアークを出してメガーを壊しました[3]。実際の作業は、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
線間にメガーを当てるとELB・インバーター・電力量計が壊れる
線間の絶縁抵抗を測るときは、接続された負荷をすべて外すことが前提です[1]。電線を外さずに線間を測ると、漏電ブレーカーは内部回路に不具合が出るおそれがあります[1]。インバーターも線間にメガーをかけると壊れるという話が、ある技術者の記録にあります[1]。
インバーターの制御回路には、故障の原因になるためメガーをかけません[1]。ある技術者の記録が示す手順では、インバーター単体を測る場合に主回路端子台の配線をすべて外します[1]。次に各端子を一括で短絡し、主回路端子とアースの間へ試験電圧をかけます[1]。一括短絡を省くと、インバーター内部の部品に電気的なストレスが加わります[1]。
モーターを測るときは、出力端子の接続を外してモーター単体で行います[1]。端子名・試験電圧・可否は機種ごとに異なるため、メーカーの取扱説明書に従ってください。
あるメーカーの電子式電力量計は、取扱説明書でパルス出力端子間の絶縁抵抗試験を禁じています[1]。パルス出力端子間に試験電圧をかけると、発信装置が破損するためです[1]。
ある技術者の記録には、線間測定の解釈としてメーカーの技術資料の引用があります[1]。引用された技術資料は、内線規程135-2注4に電線相互間の絶縁抵抗試験を省略できる旨があると紹介しています[1]。メーカーの技術資料は、電線については対地間の絶縁抵抗が十分なら線間も十分と推定しています[1]。同じ技術資料は、器具自体の極間絶縁を製造業者が保証すべきものと位置づけています[1]。条文番号と内容は、最新版の内線規程で確認してください。
印加電圧の選び間違いで高圧の絶縁不良を見逃した例
ある記録では、技術者がDC1000Vメガーで高圧回路を測り、10MΩで問題なしと見ました[2]。同じ回路をDC6000Vのメガーで測り直すと、VCTの絶縁不良で0Ωでした[2]。年次点検の別の例でも、DC1000Vで8MΩの回路がDC6000Vでは1MΩでした[2]。
GRが動作してPASが開放した後、技術者が1000Vメガーで異常なしと判断した例があります[2]。PASを再投入するとGRが再び動作し、波及事故になった例が過去に何度も起きました[2]。資料は、GR動作後の調査に高圧用のメガーを使うべきだとしています[2]。不良判定が出たときの対応例は、管轄の電力会社へ状況を報告して相談することです[2]。再投入の可否は、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
低圧で電子機器を壊す・負荷を残して誤判定する
低圧では、メガーの電圧をかけるだけで電子機器が壊れる心配があります[4]。故障しやすい機器には、通信機器・自動ドア・空調機・エレベーター・動力制御盤があります[4]。サージ対策のない製品や寿命が近い製品は、故障の可能性が高いという見方です[4]。ある技術者がメガーの出力を測ると、125Vレンジで133V、250Vレンジで266Vが出ていました[5]。電池残量や経年劣化で出力が下がる分を見込み、高めに設定されているという見方です[5]。
故障防止のために50V以下のメガーを使う方法は、技術基準に適合しないという記録があります[4]。市販品には50Vから1000Vまで6レンジを備えたメガーもあります[6]。ある技術者は50Vレンジのほうが安心としつつ、125Vで壊れる設備はすでに限界だと見ています[6]。法定の絶縁抵抗測定で使う印加電圧は、技術基準・現場の手順書・有資格者の判断に従って決めてください。
負荷を残したままの測定は、誤判定の原因にもなります[1]。電球を付けてスイッチを入れたまま線間を測ると、メガーの直流電圧は電球の抵抗にかかります[1]。電球の抵抗が1kΩなら、メガーは大きな抵抗しか測れないため指示がゼロになります[1]。照明器具のない回路では、スイッチが切のときにスイッチから先の電線を測れません[5]。
低圧回路でメガーの電圧測定機能を使う場合、ある記録はテストリードを当てる位置をブレーカー二次側としています[5]。電圧測定中にMEASUREキーを押すと、回路が破損して人身事故につながるおそれがあります[5]。
停電範囲の思い込みで充電中の高圧回路にメガーを当てた実例
ある技術者は若い頃、変圧器入れ替え工事の後に行う耐圧試験のため工場へ向かいました[3]。午前の停電は工事会社に任せ、技術者は昼から現場に入りました[3]。工事が長引いて待ち時間ができ、技術者は年次点検の絶縁抵抗測定も進めようと考えました[3]。
技術者が高圧回路にメガーを当てた瞬間、鈍い音とともに先端から青白い炎が出ました[3]。技術者は構内全体が停電していると思い込んでいました[3]。実際には、工事会社は工事箇所だけを停電させていました[3]。
1000Vのメガーは壊れ、針がまったく振れなくなりました[3]。技術者はアース側もつないでいて、誤印加の際は結果として感電しませんでした[3]。ただし技術者本人は、感電死しかねなかった経験として振り返っています[3]。アース側の接続を感電防止策と受け取らず、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。電力会社は地絡を検出し、事務所へ問い合わせました[3]。
技術者は誤印加の経験をもとに、作業前の停電範囲の確認と検電の習慣化を勧めています[3]。停電範囲の確かめ方と検電の手順は、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
停電できない回路と太陽光で気をつけること
年次点検中も非常用発電機で充電されたままの保安回路があります[7][8]。ある技術者は、停電できない保安回路を事前に活線メガで測っています[7][8]。クランプが入らない回路と測定値が悪い回路だけ、技術者は当日にブレーカーを切ってメガーを当てています[7][8]。技術者は対象回路にマーキングテープを付け、測定担当者が迷わないようにしています[8]。
盤の奥へ腕を入れる活線メガ測定では、同じ技術者が肘まで覆える高圧ゴム手袋を使いました[9]。技術者はネックレスやIDカードを外し、金属を含むベルトも外しています[9]。活線近接の保護具と手順は、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
ある技術者は、太陽光パネルに従来のメガーは使えないと説明しています[10]。日中の太陽光パネルにはつねに直流電圧がかかっているためです[10]。従来のメガーは自動放電機能で回路を強制的に地絡させ、測定誤差も出ます[10]。技術者はPVモード付きの測定器を使い、プラスとアース間から先に測っています[10]。短絡のアークで顔にやけどを負う危険もあるため、技術者は保護具の準備を勧めています[10]。
テストリードの断線や接地の不備で値を読み違える
ある技術者は、午前中まで使えていたメガーのテストリードが断線した経験を記録しています[11]。テストリードの断線は以前にもあったため、技術者は予備を1セット車に積んでいます[11]。一般に、リードが断線すると電流が流れず、絶縁良好と見誤るおそれがあります。一般に、測定前にリードの先同士を短絡し、指示がゼロになるかを見る確認がゼロチェックです。
ある技術者は、標準抵抗器の代わりにアナログテスターで絶縁抵抗計を点検しています[12]。テスターの直流電圧レンジにつなぐと、抵抗と印加電圧を一度に確かめられます[12]。技術者は、目盛盤にある内部インピーダンスとレンジの積から抵抗値を求めています[12]。テスターでの点検は定格以上の電圧をかけるため、技術者は知識のない人に勧めていません[12]。
高圧ケーブルをG端子(ガード)接地方式で測るときは、ガード端子を確実に接地します[13]。ガード端子の接地が不確実だと、シールドの電位が定まりません[13]。その結果シースに高電圧がかかり、絶縁破壊を起こすおそれがあります[13]。シースの絶縁抵抗が1MΩに満たない場合は、G接地法の測定条件を満たしません[13]。1MΩ未満のときはシースの腐食や損傷が疑われるため、目視による点検が必要です[13]。
ある技術者は新設の現場で、端子から外した高圧ケーブルのシース(外皮)の絶縁抵抗を500Vメガーで測りました[14]。表示がゼロだったため、技術者はケーブルの傷を疑いました[14]。実際には、ケーブル端末の線の一部がアングル(鋼材)に触れていました[14]。触れていた線を切り離してテープで処理すると、500Vで良好な値に戻りました[14]。
針の振れや判定基準の値だけで良否を決める
高圧ケーブルにメガーをかけると、針が一瞬だけ大きく振れることがあります[15]。キック現象は、劣化したケーブルで水トリーの水分が飛ぶ瞬間に電流が突出して起きます[15]。ただし針の振れの多くは、ノイズや誘導によるものとされています[15]。キックが起きるには、ベース電流が1μA程度流れるほどの水トリーが必要です[15]。ノイズとキックを見分ける目安は電流の大きさで、正確な診断にはデータロガーを使います[15]。
低圧の判定基準である0.1MΩや0.2MΩは、普段の値ではなく最低値だという指摘があります[16]。ある技術者は、10店舗の主幹のうち1店舗だけ0.12MΩという仮の例を示しています[16]。ほかの店舗がすべて10MΩ以上なら、0.12MΩの値には違和感を持つべきだという考えです[16]。技術者は、着任したら正常な状態の値を自分で実測するよう勧めています[16]。
測定後の放電をメガー任せにしない
高圧ケーブルにメガーで電圧をかけると、ケーブルには試験電荷がたまります[15]。高電圧の絶縁抵抗計は、試験スイッチを切ると放電回路が働き、たまった電荷を放電します[13]。ある記録では、放電抵抗は5MΩで、数mA以下の弱い電流でしか放電できません[13]。放電回路が働く時間は60秒以上の固定で、放電の状態は指示計で確かめられます[13]。
同じ記録は、メガーを使った放電には感電とメガー破損のリスクがあると指摘しています[13]。絶縁抵抗計は測定用の機器で、放電処理のための設計の余裕がほとんどないためです[13]。放電中は対象機器と体が近く、ゆっくり放電するため電荷が抜けきらないこともあります[13]。
今回集めた資料には、放電忘れによる事故の実例は見当たりませんでした。放電の方法と確認の手順は、試験器の取扱説明書と現場の手順書に従ってください。放電が済んだかどうかは、有資格者の判断で見極めてください。
現場で確かめること
- メガーを当てる箇所が停電範囲に入っているか、検電まで済んでいるか[3]
- 線間測定を行う場面か(竣工検査は全回路、定期検査の高圧は全回路で実施とする整理がある)を手順書で確かめ、行う場合は負荷を外したか[1]
- ELB・インバーターの配線や電球などの負荷が外れているか、電力量計のパルス出力端子間に試験電圧がかからないか[1]
- 発電機で充電中の回路や太陽光回路が測定対象に混ざっていないか[7][10]
- テストリードの断線や測定器の出力を点検したか[12][11]
- 測定後の放電を試験器の機能だけに任せず、手順書どおりに確かめたか[13]
実際の作業は、各事業場の保安規程・作業手順書と、有資格者の判断に従ってください。
よくある質問
Q.線間(相間)の絶縁抵抗測定は省略できますか
A.ある記録が引用するメーカーの技術資料は、内線規程135-2注4に電線相互間の絶縁抵抗試験を省略できる旨があると紹介しています[1]。同じ記録の整理では、竣工検査は全回路で実施し、定期検査の低圧は実施しないことが多いです[1]。条文番号は最新版の内線規程で確かめ、実施するかどうかは現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
Q.高圧回路を1000Vメガーで測って良好なら再投入できますか
A.1000Vで10MΩだった回路が、6000Vのメガーでは0Ωだった記録があります[2]。資料は、GR動作後の調査に高圧用のメガーを使うべきだとしています[2]。再投入の可否は、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
Q.測定後の放電はメガーの放電機能に任せてよいですか
A.高電圧の絶縁抵抗計は、試験スイッチを切ると5MΩの放電抵抗で60秒以上放電します[13]。ある記録は、メガーは測定用で放電処理の余裕がほとんどなく、放電しきれないこともあると指摘しています[13]。放電の方法と確認は、取扱説明書と現場の手順書に従い、有資格者の判断で行ってください。
Q.高圧ケーブルの測定で針が一瞬振れたら劣化ですか
A.劣化したケーブルではキック現象で針が振れますが、振れの多くはノイズや誘導によるものです[15]。見分ける目安は電流の大きさで、正確な診断にはデータロガーを使います[15]。
Q.点検後に機器が壊れた場合、原因はメガーですか
A.原因がメガーとは限らないと、ある記録は指摘しています[4]。低圧ブレーカーの開放で生じるサージ電圧が、機器を壊す場合もあるためです[4]。開放・印加・投入のどの時点で壊れたかは、後から知ることができません[4]。
出典(このページのもとにした記事・動画)
本文の [番号] はこの一覧に対応しています。詳しい経緯や写真は、書いた技術者本人のサイトでお読みください。
- [1]線間(相間)絶縁抵抗測定でELB、インバーター、電力量計が故障でんきメモ (memo-labo)
- [2]絶縁抵抗測定で印加電圧を間違い事故でんきメモ (memo-labo)
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- [4]低圧絶縁抵抗測定で機器が故障する理由・50Vメガーでんきメモ (memo-labo)
- [5]50~1000V 低圧絶縁抵抗測定とは?目的、基準、注意点でんきメモ (memo-labo)
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