PF・S形の主遮断装置とは、LBSと限流ヒューズ(PF)を組み合わせた受電用の遮断装置です[1]。LBSは負荷電流の開閉と地絡時の引き外しを、PFは短絡電流の遮断を受け持ちます[1][2][3]。対象は受電設備容量300kVA以下の設備で、LBSはストライカ引外し方式と絶縁バリア付きであることが条件です[2][4]。1相だけ溶断してもストライカが三相を開くはずですが、固定ピンの外し忘れで欠相運転になった例があります[5]。
PF・S形の主遮断装置とは(LBS+PF、300kVA以下)
主遮断装置は、受電用に置く遮断装置のことです[1]。過負荷や短絡が起きたときに、電路を自動で切る能力を持つものを指します[1]。PF・S形は、限流ヒューズ(PF)と負荷開閉器(LBS)を組み合わせ、主遮断装置の役目を持たせる受電方式です[1]。屋外に施設するものでは、非限流形の高圧ヒューズを使う場合も含まれます[1]。
対象はおおむね受電設備容量300kVA以下の設備です[2]。遮断の仕組みが単純な分、キュービクルを小型かつ安価にしやすい利点があります[2]。
PF・S形の主遮断装置に使うLBSには、2つの条件があります[4]。ストライカで引き外す方式であることと、相間と側面に絶縁バリアを備えることです[4]。絶縁バリアは、小動物などが入り込んで起きる事故を防ぐためのものです[4]。高圧の充電部が露出するLBSでは、前面に難燃性の透明な保護板を付け、赤字で危険表示をすることも求められています[6]。
定格の一例は、定格電圧7.2kV、定格電流200A、限流ヒューズと組み合わせた定格遮断電流12.5kAです[4]。
受電設備容量の数え方と300kVAの読み方
受電設備容量は、受電電圧で使う変圧器や電動機などの機器容量(kVA)を合計した値です[1]。高圧電動機は、定格出力(kW)の数値をそのまま機器容量(kVA)として数えます[1]。高圧進相コンデンサは、受電設備容量に含めません[1]。
容量の目安は、資料によって切り口が違います[3][2]。変圧器保護用の開閉器では、LBSを500kVA以下、PCを300kVA以下とする整理があります[3]。500kVAを超える変圧器にはVCBを使うという区分です[3]。受電方式としての300kVA[2]と、変圧器ごとの開閉器選びの目安[3]は、分けて読むと混乱しません。
変圧器の増設には、1台を追加する方法と、古い変圧器を容量の大きいものに替える方法があります[7]。一般に、増設を計画するときは、増設後の受電設備容量がPF・S形の対象範囲に収まるかを先に確かめます。
規程の結線では、高圧の送り出し回路は受電LBSの二次側母線から引き出します[8]。ところが送り出し回路を増設した際に、受電LBSの一次側から引き出してしまった設備があります[8]。ある技術者は、主遮断装置が2つあるような状態で操作を取り違えるおそれがあるとして、改修を勧めています[8]。改修案は、引き出しをLBS二次側に移すか、一次側の上位に主遮断装置となるLBSを足す方法です[8]。
保護の分担:LBSで切れる電流・PFが切る電流
LBSはアークシュートでアークを消すので、定格負荷の電流なら開閉できます[3]。一方で過負荷電流や短絡電流は遮断できず、PFの溶断で切ります[3]。定格を超える電流を切ろうとすると、アークで焼損や相間短絡に至るおそれがあるとされています[3]。
保護の分担は次のとおりです。地絡は地絡継電器(GR)の動作でLBSを引き外します[2]。短絡は、変圧器二次側の短絡も含めてPFの溶断で保護します[2]。
PF・S形は過負荷保護には向きません[2]。PFは最小遮断電流に届かない電流では動作しないためです[2]。小容量の設備では、変圧器の過負荷を低圧側のMCCBで保護します[2]。サーマルリレーや油温継電器で警報を出す方法もあります[2]。高圧電動機がある設備ではPF・S形を採用できません[2]。
LBSの開閉寿命は電気的に200回、機械的に1000回で、頻繁に開閉する箇所には向きません[3]。更新推奨時期は、開閉器と限流ヒューズのどちらも使用開始後15年です[3]。
主PFの定格選定:小さすぎると突入電流、大きすぎると保護協調の不良
主PFは、定格を小さく選びすぎると変圧器の突入電流で劣化し、溶断するおそれがあります[2]。反対に大きく選びすぎると、配電用変電所の過電流継電器と保護協調が取れません[2]。保護協調が取れないと、波及事故につながるおそれがあります[2]。
限流ヒューズには用途別の区分があります[9]。変圧器用(T)は、定格電流の10倍を0.1秒流す通電を100回繰り返しても切れないことが条件です[9]。電動機用(M)やコンデンサ用(C・LC)にも、それぞれ別の繰り返し条件があります[9]。
変圧器の定格電流は、三相なら定格容量を定格電圧と√3の積で割って求めます[9]。ヒューズの特性では、切れずに耐えられる許容時間を区別して読みます[9]。溶断時間は素子が溶けて回路が切れるまでの時間で、終わった時点ではアークがまだ残っています[9]。動作時間は、アークが消えて電流が完全に止まるまでの合計です[9]。
一般に、主PFの定格は、変圧器の容量や台数とメーカーの選定資料を突き合わせて決めます。実際の選定は、設計者や有資格者の判断に従ってください。
CB形との違い:遮断の速さと復旧
主遮断装置に高圧交流遮断器(CB)を使う点が、CB形とPF・S形の違いです[1]。
限流ヒューズは、短絡電流を最初の半波のうちに遮断できます[9]。通過する電流の波高値も低く抑えるため、機器が受ける機械的・熱的な損傷を軽くできます[9]。50Hzの例では、OCRとVCBの合計遮断時間が約0.12秒です[9]。限流ヒューズの動作時間は約0.01秒です[9]。
一般に、PFは一度溶断すると新しいヒューズへの交換が必要で、遮断器のように再投入するだけでは復旧できません。保護継電器を持たないPF・S形では、高圧用のVTやCTがなく、試験端子のVTT・CTTもないことが多いです[2]。逆電力継電器(RPR)がある設備では、電流と電圧の要素を取るため高圧用VT・CTがあります[2]。
資料には、VCBで受電し変圧器2台をLBS経由でつないだ設備に、変圧器を1台足す例があります[7]。資料の例では、高圧CTを変流比の大きいものに替え、OCRの電流整定値と高圧側の電流計も変える必要があるとしています[7]。一般に、CTの交換が必要かどうかは、増設後の負荷電流とCT定格の関係で決まります。
ヒューズが1相だけ切れたとき:欠相の見分け方
ストライカ引き外し式のLBSでは、短絡電流でヒューズが溶断すると表示棒が飛び出します[3]。表示棒がトリップレバーを押してラッチが外れ、三相がまとめて開放されます[3]。三相を同時に開くことで、欠相運転を防ぎます[3]。表示棒がヒューズの上側に出るタイプもあるとされています[3]。
一般に、欠相を疑うときは、溶断表示棒が出ていないかやLBSが開放位置にあるかを外観で確かめます。ヒューズ動作表示スイッチがあれば、溶断に連動して接点が閉じます[3]。動作表示スイッチの接点に自己保持・ランプ・ブザー・リセットを組み合わせると、溶断の警報回路を作れます[3]。
注意が必要なのは、ヒューズが切れたのにLBSが開かない場合です。溶断していない相だけに電圧がかかり、欠相のまま運用が続いてしまいます[5]。負荷側の停電や異常で初めて気付いた例もあります[5]。一般に、三相の負荷は欠相すると正常に動かないため、負荷側の不調の連絡が発見のきっかけになることがあります。
地絡でLBSが開いたとき:GRとの連動と再投入前の確認
PF・S形では、GRが地絡を検出してLBSを引き外します[2]。ある記録では、送り出しケーブルのGRが動作してLBSが開いた例があります[10]。ケーブルの絶縁抵抗とシースの絶縁は良好でしたが、復電すると再びGRが動作してLBSが開きました[10]。
ある技術者は、原因を探る手がかりとして次の点を挙げています[10]。まず電力会社に、零相電圧(V0)を検知したかを問い合わせます[10]。ケーブルシースを両端で接地していると、迷走電流などでGRが誤動作することがあります[10]。両端接地が見つかれば、片端接地に直して様子を見ます[10]。GR本体の単体試験と、LBSトリップコイルの抵抗値・絶縁抵抗の確認も候補です[10]。
引込のPASでも、1000Vの絶縁抵抗計で異常がなかったのに、再投入で再び地絡して波及事故になった例があります[11]。その例の対策として、5000V以上の絶縁抵抗計による測定や耐圧試験のやり直しが挙げられています[11]。再投入の判断は、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
受電点をモールドジスコンからPASに替えた設備で、受電盤の地絡方向継電器(DGR)を使わなくなった記録があります[12]。LBSとGRの組み合わせでGRを使わない場合は、GRの制御電源を切る方法と、LBSへのトリップ線を外して絶縁する方法が紹介されています[12]。トリップ回路に電圧がかからなければ、LBSが引き外されることはありません[12]。一般に、継電器を無効にする処置は保護の範囲を変える作業なので、現場の手順書と有資格者の判断に従って行ってください。
現場の実例:固定されたままのLBSと、溶断後のヒューズ交換
ある技術者の記録では、新品LBSを運ぶときの固定ピンや結束バンドが外されないまま運用されていました[5]。停電点検でもLBSを開放しておらず、PFが溶断して負荷に停電や異常が出てから初めて気付いた例です[5]。
相間短絡でPFが切れてもLBSが開かなければ、上位のVCBがOCRの瞬時要素で開き、全館停電になるおそれがあります[5]。PF・S形のキュービクルでは、配電側のVCBが開く波及事故につながる可能性があります[5]。
再発防止として、竣工検査・交換工事・年次点検では必ずLBSを開閉して確かめることが挙げられています[5]。操作フック棒での開閉に加えて、ストライカ引き外し機構の動作も確認します[5]。
ある記録では、LBS一次側が充電されたままのヒューズ交換を、してはいけない作業としています[13]。充電部に近づく作業になり、感電のおそれがあるためです[13]。電気管理技術者からは、何よりも安全を優先すべきだという意見が出ています[13]。古いLBSは絶縁が低下していることがあり、開放していても安全とは限りません[13]。停電範囲や作業方法は、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
交換の前に溶断の原因を調べることも大切です。高圧コンデンサ用のLBSの場合、コンデンサが相間短絡していると、ヒューズを替えてもまた溶断する可能性があります[13]。調べ方としては、テスターでRS・ST・TRの3か所の相間静電容量を測ります[13]。コンデンサが相間短絡していれば、測った値に違いが出ます[13]。一般に、相間静電容量の測定は停電・検電と残留電荷の放電・接地を済ませたうえで、現場の手順書と有資格者の判断に従って行ってください。
劣化・固着が招く事故と点検時の注意
ある事故例では、点検後の復電でモールドジスコンを投入し、LBS一次側まで充電しました[5]。投入の数十秒後に1984年製のLBSの一次側で短絡が起き、正面にいた作業者がアークでやけどを負いました[5]。対策には、扉を閉めて受電し受電後もしばらく待つこと、LBS正面のアクリル板と相間バリアの設置があります[5]。製造年が古い本体は、更新が推奨されています[5]。
古いLBSは、ストライカのロック部がすでに固着していることがあります[5]。受電中に開閉して動きが遅いと、アークで刃が傷むおそれもあります[5]。耐用年数を過ぎても更新されない設備では、受電状態のままLBSを開閉しない方がよい場合もあるという見方があります[5]。
相間バリアは、ヘビやネズミ、ツタなどによる相間短絡を防ぎます[6]。モールドジスコンからPF・S形キュービクルにつながる構成では、LBSの上流に保護装置がありません[6]。そのためLBSで相間短絡が起きると、すぐ波及事故になり得るとされています[6]。古いタイプのLBSは相間バリアを後付けできない場合が多く、新しいタイプは後付けできる場合が多いです[6]。
LBSが固着して開かないと、トリップコイルに電圧がかかり続けて焼損する事故が起きています[14]。LBSと直列リアクトル・コンデンサの現場では、投入状態が続いてコンデンサが過熱・膨張し、爆発した例があります[14]。モールドジスコン・LBS・GRの現場では、再送電で再び地絡して波及事故になった例があります[14]。補助スイッチのないLBSと手動復帰形のGRを組み合わせると、試験中にもコイルが焼損することがあります[14][15]。対策として、LBSへの補助スイッチの取り付けと、GRの復帰方式を自動に切り替えることが挙げられています[14]。
摺動部の手入れは、現場や設備によって判断が分かれます[16][17]。ある連動試験では、GR単体が0.15秒なのに対し、LBSとの連動では0.40〜0.60秒かかりました[17]。原因の候補には、LBS本体の劣化と、開極動作に使う電源の容量不足や波形ひずみがあります[17]。ある記録では、摺動部にCRCを吹いて再試験する方法が挙げられています[17]。ただし、CRCなどの潤滑剤は時間がたつとべたつき、固着の原因になるという指摘もあります[16][18][19]。注油の可否と使う油は、メーカーの取扱説明書に従ってください。試験電源にはモバイルバッテリーを避け、発電機を使う対策もあります[17]。
一方で別の技術者は、各社の取扱説明書にラッチローラー自体への注油指示はないと述べています[16][18][19]。一般的な潤滑剤は時間がたつとべたつき、固着の原因になるため、ラッチローラーには基本的に注油しない考えです[16][18][19]。すでに固着したものは、パーツクリーナーで洗浄し、固着しにくいフッ素オイルを使って経過を見るしかないとしています[16][18][19]。メーカーの取扱説明書を確認したうえで判断してください。
現場で確かめること
- 受電設備容量(変圧器と電動機の合計、進相コンデンサは除く)が300kVA以下に収まっているか
- 溶断表示棒が出ていないか、LBSの開閉位置と表示が合っているか
- 固定ピンや結束バンドが残っていないか、開閉とストライカ引き外しの動作を確認したか
- 相間・側面の絶縁バリアと前面の保護板が付いているか
- 主PFの定格が変圧器容量に対して小さすぎ・大きすぎになっていないか
- 更新推奨時期(使用開始後15年・負荷電流開閉200回)、補助スイッチの有無とGRの復帰方式
実際の作業は、各事業場の保安規程・作業手順書と、有資格者の判断に従ってください。
よくある質問
Q.PF・S形の主遮断装置とは何ですか?
A.限流ヒューズ(PF)と負荷開閉器(LBS)を組み合わせ、受電用の遮断装置とする形式です[1]。短絡はPFの溶断で切り、地絡はGRの動作でLBSを引き外して切ります[2]。主遮断装置のLBSには、ストライカ引外し方式と相間・側面の絶縁バリアが求められます[4]。
Q.PF・S形の受電は何kVAまで使えますか?
A.受電設備容量300kVA以下の設備で使われる形式です[2]。受電設備容量は変圧器や電動機などの容量の合計で、高圧進相コンデンサは含めません[1]。変圧器保護用の開閉器としてLBSを500kVA以下とする整理もあり、受電方式の目安とは分けて考えます[3]。
Q.主PFの定格はどう選べばよいですか?
A.小さすぎると、変圧器の突入電流で劣化して溶断するおそれがあります[2]。大きすぎると配電用変電所の過電流継電器と協調が取れず、波及事故につながるおそれがあります[2]。実際の選定は、メーカーの資料をもとに設計者や有資格者の判断に従ってください。
Q.LBSで短絡電流を遮断できますか?
A.LBSで切れるのは定格負荷の電流までで、過負荷電流や短絡電流は遮断できません[3]。PF・S形では、短絡はPFの溶断、地絡はGRによるLBSの引き外しで保護します[2]。
Q.LBSのヒューズは停電せずに交換できますか?
A.資料では、LBS一次側が充電されたままのヒューズ交換は、感電のおそれがあるため行わないよう示されています[13]。古いLBSは開放していても絶縁低下で安全とは限らず、無停電での交換は断るという現場の意見もあります[13]。実際の作業は、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
出典(このページのもとにした記事・動画)
本文の [番号] はこの一覧に対応しています。詳しい経緯や写真は、書いた技術者本人のサイトでお読みください。
- [1]受電設備基準用語佐近電気管理事務所
- [2]PF-S型(キュービクル式受電設備)300kVA以下でんきメモ (memo-labo)
- [3]LBS 限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器 JIS C 4611でんきメモ (memo-labo)
- [4]限流ヒューズ付き高圧交流負荷開閉器佐近電気管理事務所
- [5]LBSの注意点でんきメモ (memo-labo)
- [6]LBS相間バリアでんきメモ (memo-labo) / 2024年11月13日
- [7]設備容量の増設でんきメモ (memo-labo)
- [8]高圧受電設備規程 第1140節 結線及び配置【規定】Denkikanri3y's Blog / 2024年12月11日
- [9]高圧ヒューズ PFとは?種類、原理、目的、選定でんきメモ (memo-labo) / 2026年7月15日
- [10]送りケーブルのGRが動作しLBS解放。原因は?でんきメモ (memo-labo)
- [11]PASのSOGがGR動作でPAS開放、絶縁抵抗測定で異常なし、PAS投入で再び地絡、波及事故でんきメモ (memo-labo)
- [12]不要になったGR・DGRの不動作処置でんきメモ (memo-labo)
- [13]LBSのヒューズが溶断していた場合、どうする?でんきメモ (memo-labo)
- [14]GRとLBSの連動試験でトリップコイルが焼損する事故でんきメモ (memo-labo)
- [15]LBS 補助スイッチ・トリップコイル端子台でんきメモ (memo-labo) / 2021年11月5日
- [16]富士電機製LBSのラッチローラー洗浄とある電気管理の位相 / 2026年5月13日
- [17]LBSとGRの連動試験で開閉動作が遅れる現象でんきメモ (memo-labo)
- [18]LBSのラッチローラーは基本注油しないとある電気管理の位相 / 2026年5月15日
- [19]LBSラッチローラー注油後の状態(2年目)とある電気管理の位相 / 2025年5月6日