現場の記事から作った解説

漏れ電流の測定原理 クランプで止めずに測れる理由と値が狂う原因

公開 2026年10月21日出典 14件サイト監修:本田電気管理事務所
結論

電気を止めずに漏れ電流が測れるのは、電線を一括で挟むと健全時の電流が打ち消し合うためです[1][2]。絶縁不良で大地へ逃げた分だけが打ち消されずに残り、零相変流器やクランプはその差を検出します[1]。B種接地線を挟めば、変圧器二次側以降の漏れが大地を経て戻る道を一か所で押さえられます[2][3]。ただし高調波やフィルタ用コンデンサの影響で、指示値が絶縁状態と関係なく動くことがあります[2][4][3]。

一括で挟むと打ち消し合う 零相電流の考え方

一般に、単相の往き線と帰り線を一緒に挟むと、逆向きの電流の磁界が打ち消し合います。三相でも考え方は同じで、120°ずつずれた三相の電流は健全なら合成値がゼロです[1]。一線が地絡すると電流が大地へ逃げるため、三相が不均衡になって合成値が残ります[1]。クランプで三線一括に測る場合も、R相とS相とT相の合計が漏れ電流として表示されます[2]。

零相変流器の中身は、ドーナツ形の鉄心と巻線です[1]。不均衡な電流が鉄心を通ると磁束が生じ、巻線に起電力が誘導されて二次端子へ出力されます[1]。一般に、クランプ式の漏れ電流計も鉄心で磁束を拾う仕組みなので、電線を切り離さずに測れます。

幹線が太くて一括で挟めないときに、R相とS相の合計からT相の値を引く分割測定を紹介した記録があります[2]。同じ記録は、クランプメーターの表示が正の実効値である点に注意を促しています[2]。一般に、実効値どうしの引き算では、T相と位相のずれた漏れ電流を正しく求められません。一般に、負荷電流を測る誤差だけでmA級の漏れ電流を上回るため、分割測定は絶縁の判定に使えません。一般に、太い幹線ではB種接地線や分岐回路で測るか、窓径の大きい漏れ電流用クランプを使います。

B種接地線を挟むと全体の漏れが分かる理由

低圧側で絶縁不良が起きると、漏れた電流は大地を通りB種接地線から変圧器へ戻ります[5][3]。大地とB種接地線を通る閉回路の電流を、変流器でとらえるのがIo方式です[3]。そのためB種接地線で測ると、変圧器二次側以降の漏れ電流の合計を一度に把握できます[2]。不良箇所を探すときは、B種で全体を見てから三相一括で上流から下流へ追い込みます[2]。

見落としやすいのは、接地相の絶縁不良がB種接地線の値に表れにくい点です[2][5]。接地相は対地電圧が0Vなので、絶縁が悪くても電流が流れずクランプでは検出できません[5]。この場合は遮断器を開放して下流を絶縁抵抗計で測ると、不良が見つかることがあります[2]。また接地相の絶縁が落ちると同じバンクの他回路から漏電が入り込み、B種での監視が難しくなります[6]。

接地相でも検電器が反応する場合があり、そのときはB種接地線にも対地電圧があるとされています[6]。接地線に触れる作業の可否は、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。

停電点検で負荷側を切り離せる機会に、変圧器二次側のMCCBをすべて開放してB種接地線を測る方法もあります[7]。この方法では、トランス二次側からMCCB一次側までの区間の漏れ電流が分かります[7]。充電部の近くで作業することになるため、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。

高調波とノイズで値が揺れる理由

インバータやスイッチング電源がある回路では、漏れ電流の波形に高周波成分が重なります[2]。フィルタ機能を持つクランプメーターは、不要な高周波成分を除いて表示できます[2]。ある機種の説明では、フィルタ有効時の帯域は180Hz(-3dB)で、一般的な漏電遮断器と同程度です[2]。

ある技術者は、電源の接地相と盤の接地線の間の電圧波形を観察しました[8]。その電圧は漏れ電流と接地抵抗の積なので、接地線電流と同じ形になるという考え方です[8]。観察した波形はkHz単位の周波数で、ローパスフィルタを有効にすれば拾わない成分でした[8]。言い換えると、フィルタを切ればこの成分が加わって指示値が上がります[8]。

注意したいのは、フィルタで高周波を除いても静電容量分のIocは残る点です[2]。電源フィルタのコンデンサなどの影響で、見かけの漏れ電流が増える設備が多くなっています[3]。高調波やIocが多い電路では、絶縁性能と関係なくIoが大きく出ることがあります[4]。抵抗分の見分け方は、IoとIorの解説ページで扱います。

近くの大電流と計器の違いで値がずれるとき

一般に、クランプの近くに大電流の電線や母線があると、その磁界を拾って指示値が揺れることがあります。一般に、測る電線をクランプの中央に寄せて鉄心の合わせ目を確実に閉じると、影響を抑えやすくなります。一般に影響の出方は機種で違うため、取扱説明書の注意事項を確認しておくと確実です。

計器どうしの差を把握しておく運用もあります[9]。ある技術者は月次点検でクランプメーターのIoを測り、年2回ほどIorリークテスターや絶縁監視装置と比べて記録しています[9]。動力変圧器のB種接地線で、クランプメーターのIoは26.7mAでした[9]。同じ線でリークテスターは26.9mA、絶縁監視装置は27mAを示しました[9]。

この技術者は、ここまで一致するのは珍しく、普段は計器ごとにある程度の差が出ると述べています[9]。差の大きさを知っていれば、絶対値でなく相対値で絶縁管理や警報対応を進められます[9]。

現場の実例 出たり消えたりする漏れ電流をどう捕まえたか

ある技術者が月次点検でB種接地線を測ると、普段5mA程度の値が100〜120mAになっていました[10]。漏れはおよそ50秒で収まり、時間をおいて再び出る動き方でした[10]。回線をたどると押出機に行き着き、作業中の従業員は以前から調子が悪いと話しました[10]。技術者は、機械を動かすときだけ絶縁不良の回路が動いていると推測しています[10]。

この現場は、受電所から約50m離れたサブ変電設備でした[10]。無線通信の遅れと絶縁監視装置の30秒遅延設定が重なり、発報には至っていませんでした[10]。

別の事業所では、間欠的な漏電を調べるためにB種接地線へクランプロガーを付けました[11]。2秒間隔の記録には、200mA前後の漏電が断続的に残っていました[11]。時間軸を20秒に縮めると、約1分間隔で10秒ほどの漏電の塊が20〜30分おきに現れていました[11]。間隔も大きさも規則的なため、技術者は運転中の機器の制御時に出ていると推定しました[11]。次の段階では工場の担当者にデータを渡し、心当たりの回路を教えてもらう方針です[11]。

間欠漏電は、駆け付けて測っても正常で、停電して絶縁抵抗を測っても異常が出ないことがあります[12]。床のコードを踏んだときや、雨の後だけ出る漏電も記録されています[12]。霜取りタイマーで運転と停止を繰り返す冷凍機では、内部ヒーターの故障が原因でした[12]。捕まえるには、サンプリングの速いロガーか最大値を残せるロガーが向いています[12]。

現場で確かめること

  • 三相は三線すべて、単相は往きと帰りを一緒に挟んでいるか
  • クランプの鉄心が閉じ、電線が中央に寄っているか
  • 近くに大電流の電線や母線がないか
  • フィルタの有効と無効を記録し、毎回そろえているか
  • 普段の値や他の計器の値と比べて、差の傾向をつかんでいるか
  • 値が出たり消えたりするなら、ロガーで時間変化を残したか

実際の作業は、各事業場の保安規程・作業手順書と、有資格者の判断に従ってください。

よくある質問

Q.漏れ電流はなぜB種接地線で測るのですか?

A.低圧側の漏れ電流は大地を通り、B種接地線から変圧器へ戻るからです[5][3]。B種接地線で測れば、変圧器二次側以降の漏れの合計を一度に把握できます[2]。ただし接地相の絶縁不良はB種接地線の値に出ないので、停電時の絶縁抵抗測定と組み合わせます[2][5]。

Q.クランプメーターのフィルタはオンとオフのどちらで測るべきですか?

A.フィルタを切るとkHz帯の成分が加わり、指示値が上がります[8]。同じ発信者は、主幹でフィルタ有効時に10mA以下なら問題ないとし、Ior測定器で測ると有効時の値の6割程度が絶縁に関わる分になると述べています[13][14]。いずれも一個人の経験に基づく目安なので、設定をそろえて推移を比べてください。

Q.太い幹線で三線一括に挟めないときはどう測りますか?

A.実効値どうしの引き算になるうえ、負荷電流の測定誤差がmA級の漏れを上回るため、絶縁の判定には向きません。B種接地線や分岐回路で測るか、窓径の大きい漏れ電流用クランプを使ってください。

Q.測るたびに漏れ電流の値が違うのはなぜですか?

A.計器ごとの差もあり、クランプメーターと絶縁監視装置の値は普段ある程度ずれます[9]。原因を追うときは、速いサンプリングや最大値記録ができるロガーを使います[12]。

Q.高圧ケーブルをクランプメーターで挟んでもよいですか?

A.いいえ。クランプメーターで高圧充電部を測ってはいけません[2]。クランプメーターには使える電圧の区分があり、試験器の故障や手の接近による感電のおそれがあるためです[2]。測定位置は現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。

出典(このページのもとにした記事・動画)

本文の [番号] はこの一覧に対応しています。詳しい経緯や写真は、書いた技術者本人のサイトでお読みください。

  1. [1]ZCT 零相変流器とは?仕組み、配線、選定でんきメモ (memo-labo) / 2007年1月1日
  2. [2]クランプメーター・漏れ電流測定、原理、使い方でんきメモ (memo-labo)
  3. [3]高圧機器種々の点検方法・劣化診断佐近電気管理事務所
  4. [4]I0・I0r・I0c 漏れ電流とは?原理、測定方法、違いでんきメモ (memo-labo)
  5. [5]接地相の絶縁不良はなぜ漏電しないのか?でんきメモ (memo-labo)
  6. [6]接地相の絶縁低下 同一バンク他回路の漏電から分流でんきメモ (memo-labo)
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