Igrは、変圧器のB種接地線に低周波の監視電圧を重畳し、その電圧に対して流れる漏れ電流から静電容量分を除いた抵抗分の電流です[1][2]。Ioは抵抗分と静電容量分を合成した漏れ電流で、絶縁性能と関係なく大きくなることがあり、Io検出では抵抗分の漏電監視ができない場合があります[3]。警報が出たときの動き方として、ある事例では、現場担当者に疑わしい機器の調査を頼んで不良回路の目星を付け、絶縁抵抗測定で確かめています[4]。
Igr方式は何を測っているのか
Igr方式は、電路に数ボルト程度の弱い低周波の監視電圧を注入し、その電圧に対して流れる漏れ電流を測る絶縁監視の方法です[5][2]。注入はCTを介して変圧器のB種接地線に電圧を重畳する形で行い、設備を活線のまま常時監視できます[1]。
測った電流のうち静電容量による成分は装置内部の演算で分離して除かれ、抵抗分の漏れ電流であるIgrだけが絶縁状態の指標になります[2]。中性線を含む全電路を監視できる点も、この方式の特徴として挙げられています[5]。
ある機種(IGR-400)の機器構成はZCT、電圧重畳部、検出部の3つです[1]。この機種では、監視電圧の周波数を20Hz、15Hz、12.5Hzから選べ、出荷時は20Hzの非同期設定になっています[1]。
Io・Iorとの違い
Ioは漏れ電流の合成成分、Iorは抵抗分の有効漏れ電流、Iocは対地静電容量分の無効漏れ電流です[3]。Io方式は、絶縁不良で大地とB種接地を回って流れる電流をCTで拾う方法で、漏電火災警報器と同じ原理です[2]。
インバータや各種フィルタが増えた設備では、高調波や静電容量分の電流が多くなり、絶縁の良否と関係なくIoが大きくなります[3]。機器の電源フィルタのコンデンサによって見かけの漏洩電流が増え、Io方式での監視が難しくなったことが、Igr方式が考えられた背景です[2]。
IorとIgrはどちらも抵抗分を見る値ですが、取り出し方が違います。Ior方式は高調波を除いた基本波から演算で求め、Igr方式は注入した監視電圧に対する電流から求めます[6][2]。なお、Iorの読み方は「アイゼロアール」が正しいと考えつつ、普段は「アイオーアール」と呼んでいるという技術者の記録もあります[7]。
警報が出た現場の実例 動力変圧器で1A超の通報
ある技術者の記録では、朝7時前に絶縁監視装置から漏電の通報が入り、動力変圧器のIorが1Aを超えていました[4]。ほかの変圧器のIorもつられて増え、そちらでも警報が出ています[4]。これはIor表示の装置での事例ですが、抵抗分の漏れ電流で警報が出たあとの動き方として参考になります。
この技術者はすぐに緊急出動を決め、24時間稼働の事業場だったため、早速担当者へ電話して疑わしい機器の調査を頼みました[4]。到着時には担当者が制御盤のマグネットの異常を見つけており、モーター回路の絶縁抵抗を測ると0MΩの回路がありました[4]。
回路を切り離してモーターコイルを測ると2回路が0MΩで、内部で地絡と短絡が起きていると判断されています[4]。機械はモーター3台で動くもので、残る健全な2台での運転を依頼し、修理と予備品の手配は事業場とメーカーで調整することになりました[4]。到着前に現場へ調査を頼んだことが、不良回路を早く特定できた要因だったと振り返っています[4]。
回路の切り離しや絶縁抵抗測定は停電と検電を伴う作業です。実施の可否と手順は、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
Igr方式の装置の試験と設置時の注意
ある技術者がまとめた試験方法(本人が予想と断っている内容)では、絶縁側の試験は本体と絶縁監視電圧発生器の両方に制御電源を入れ、B種接地線に電圧が重畳された状態でZCTの穴に電流を流します[1]。漏電(Io)側の試験では電圧発生器に電源を入れず、本体だけに電源を入れてZCTに電流を流します[1]。動作すると赤の漏電警報ランプが点灯して保持され、接点は自動で復帰し、ランプは警報復帰後にリセット操作をすると消えます[1]。
電圧発生器の出力周波数は必ず検出部の設定と合わせます[1]。両者が食い違うと検出システムとして働きません[1]。
設置面では、D種接地を行い、動力の接地とは分けること、高圧線や動力線から200mm以上離すことが注意点として挙げられています[1]。接地をしない場合や離隔が足りない場合は、誤計測や故障の原因になります[1]。別の機種では、ZCTへ常時出している補正信号が位相の補正にも使われるため、配線の極性を誤ると正常に動作しません[8]。
Igrが正しく測れない場面と漏電の判断
負荷設備の稼働で強いノイズが出る現場では、重畳信号や検出信号が影響を受け、Igr方式で正常に監視できないことがあります[5][8]。IgrとIorを切り替えられる機種では、Ior方式に切り替えることで監視の空白をなくせます[8]。切替えはスイッチをIor側へ動かしたあと、必ず復帰スイッチを押します[8]。この機種は表示切替でIgr、Ior、Ioの現在値と最大値を確認できます[8]。
抵抗分の値から絶縁抵抗の目安を逆算する考え方も紹介されています。200V回路でIorが2mAなら0.1MΩ、10mAなら0.02MΩに相当し、後者は絶縁不良の可能性が高いとされています[9]。
絶縁監視装置の設置ルールとしては、漏れ電流が警報設定値(上限は50mA)以上の状態で5分以上続くと警報を出すこと、警報時は連絡責任者に連絡して設備の状態を確かめ、必要に応じて速やかに点検することが示されています[6]。一方、漏電遮断器や漏電警報が動作していないからといって、絶縁抵抗が確保されているとは限らないという指摘もあります[10]。
現場で確かめること
- 警報や記録の値がIgr・Ior・Ioのどれかを確認する
- 表示切替で現在値と最大値の両方を見る
- 電圧発生器と検出部の周波数設定が一致しているか確認する
- 装置の接地が動力接地と分離されているか、高圧線・動力線との離隔が取れているか確認する
- ZCTの補正信号配線の極性を確認する
- 警報時は現場担当者に連絡し、疑わしい機器の心当たりを先に聞く
実際の作業は、各事業場の保安規程・作業手順書と、有資格者の判断に従ってください。
よくある質問
Q.IgrとIorはどちらも抵抗分の漏れ電流ですが、何が違いますか
A.Igrは、B種接地線に重畳した低周波の監視電圧に対して流れる電流から、静電容量分を除いて求めます[1][2]。Iorは、高調波を除いた基本波から演算で求める抵抗分の漏れ電流です[6]。
Q.Ioが大きいのに絶縁抵抗に問題がないのはなぜですか
A.Ioは抵抗分と静電容量分を合成した値です[3]。インバータやフィルタが多い電路では、高調波や静電容量分の電流が増え、絶縁性能と関係なくIoが大きくなることがあります[3]。
Q.Igr方式の絶縁監視装置が正常に監視できないのはどんなときですか
A.負荷設備が強いノイズを出していると、重畳信号や検出信号が影響を受けて正常に監視できない場合があります[5]。電圧発生器と検出部の周波数設定が合っていない場合も、検出システムとして動作しません[1]。
出典(このページのもとにした記事・動画)
本文の [番号] はこの一覧に対応しています。詳しい経緯や写真は、書いた技術者本人のサイトでお読みください。
- [1]IGR-400絶縁監視装置 試験方法でんきメモ (memo-labo)
- [2]高圧機器種々の点検方法・劣化診断佐近電気管理事務所
- [3]I0・I0r・I0c 漏れ電流とは?原理、測定方法、違いでんきメモ (memo-labo)
- [4]モーター内部地絡事故で絶縁監視装置通報Denkikanri3y's Blog / 2025年5月28日
- [5]Igr方式とは?電路に低周波監視電圧を注入する絶縁監視方法でんきメモ (memo-labo)
- [6]絶縁監視装置とは?設置基準、仕組み、メリットでんきメモ (memo-labo)
- [7]I0r測定器の校正を受託実施とある電気管理の位相 / 2025年8月20日
- [8]LIG-2 絶縁監視装置 試験方法でんきメモ (memo-labo)
- [9]I0rクランプリーカー・無停電状態で漏れ電流の抵抗成分測定でんきメモ (memo-labo)
- [10]ELBやLGRが未動作でも絶縁不良はありえるのです。電験・電気管理(denken333) / 2019年2月22日