ZCTは三相を一括して通し、合成がゼロにならない不平衡電流を地絡として捉えます[1]。ZCTをどこに付けるかと、シースアースをどう通すかで、守れる範囲が変わります[2][3]。ZCTを挟んだ両側でシースを接地するなど接地のしかたを誤ると、循環電流でGRが不要に動作することがあります[2][4]。
ZCTが検出しているのは三相の不平衡電流
一般に、ZCT(零相変流器)は地絡継電器(GR)へ零相電流を渡すセンサーです。ZCTの窓には三相の電線をまとめて通します[1]。健全なときは位相が120°ずつずれた三相電流が打ち消し合い、合成はゼロになります[1]。
一線地絡が起きると、地絡電流は健全相の対地静電容量を経由して回路を一巡します[1]。このとき三相の合成はゼロにならず、ドーナツ状の鉄心に磁束が生じます[1]。鉄心に巻いたコイルに電圧が生じ、GRはZCTの二次出力で地絡を判定します[1]。
ある技術者の動画は、非接地方式の配電線で地絡電流がどこから来るかを解説しています[5]。GRが捉える地絡電流は、ZCTより電源側の対地静電容量から供給されます[5]。需要家構内の対地静電容量も、外から見れば地絡電流の供給源です[5]。このため電流要素だけで動くGRは、構外の地絡によるもらい事故で停電することがあります[5]。
ZCTの設置位置と保護範囲
受電設備の基準の抜粋では、貫通形ZCTを引込ケーブルの負荷側端子近くに施設します[6]。モールドジスコンとLBS+GRの構成では、ケーブルが地下から立ち上がる部分にZCTを付けます[1]。ある技術者の構成例では、UGSやPASがある需要家の引込部分にZCTを設けていません[7]。ただし、G付PASと受電設備側の地絡継電装置を併せて置く構成もあります[3]。その構成では、後で触れる同時検出に注意が要ります[3]。
DGR付きのPASやUGSが無く、電力会社の借室から高圧を受ける構成もあります[7]。この構成では、借室のAS二次側から需要家のVCB二次側までを地絡保護の対象にします[7]。ZCTはVCT一次側の引込部分に設けます[7]。
受電盤にGRと開閉器を置いてサブ変電所へ送る構成もあります[7]。この場合のGRは、サブ変電所内と送りケーブルの地絡を守る目的で付けます[7]。サブ変電所内だけを守るなら、継電器をサブ変電所側に設けます[7]。制御電源もサブ変電所内からとり、停電と同時に引き外し用電源も止まるようにします[7]。
シースアースの通し方で検出範囲が変わる
ZCTの位置とケーブルシールドの接地方法によって、地絡の検出範囲と感度は変わります[3]。サブ変電所への送りケーブルでは、シースの接地線をZCTに通してから接地します[2]。通す向きを受電盤側からサブ変電所側にそろえると、検出できる地絡は二つです[7]。サブ変電所内の地絡と、送りケーブル自体の地絡です[2][7]。
シースをZCTに通さずサブ変電所側で接地すると、ケーブル地絡の電流はZCTを往復します[2]。往きと帰りが打ち消し合うため、守れるのはサブ変電所内の地絡だけです[2]。この状態で送りケーブルが地絡しても、送りのGRは動きません[7]。上流のDGRが代わりに動き、全館停電になるおそれがあります[7]。
サブ変電所側にDGRを置く設備では、シースをあえて逆向きに通す処理もあります[2]。サブ変電所内の地絡ではサブ変のCBだけを開き、主変のUGSは開かずに切り分けたいからです[2]。ある技術者は、逆向きにしなくても大きな問題にはならないと述べています[2]。
引込ケーブルのシース処理は判断が分かれる
モールドジスコン+VCB+GRの物件で、ある技術者はシースの通し方を三通り比べました[8]。ZCTに通さない形、電源側から負荷側へ通す順向き、負荷側から電源側へ通す逆向きです[8]。ある技術者の整理では、もらい事故でGRが動きやすい順に順向き、通さない形、逆向きとなります[8]。
一方、別の資料はG付PASが無い引込ケーブルについて、ZCTの負荷側で接地する形を示しています[3]。この形ではZCTより電源側の地絡も検出でき、需要家側で事故点を見つけやすくなります[3]。負荷側で接地してZCTに通す形では、ケーブル地絡は検出できません[3]。電源側の事故かどうかも確認できず、事故点の特定に時間がかかります[3]。
G付PASがある設備でケーブル地絡も検出する形にすると、両方が同時に検出します[3]。主遮断装置が先に動くとG付PASの操作電源が消え、G付PASが動かないおそれがあります[3]。もらい事故の回避と事故点の把握のどちらを重く見るかは、現場や設備によって判断が分かれます。
現場の実例:ブラケットで接地した後にZCTへ通していた送りケーブル
ある技術者の記録では、主変電所からサブ変電所への送りケーブルに施工不良がありました[2]。工事の段階でシースをブラケットで接地し、その後さらにZCTへ通していました[2]。この施工は多点接地にあたり、ZCTは地絡電流を正しく捉えられません[2]。迷走電流によってGRが誤動作する可能性もあります[2]。
対処では、3本のシース接地線を1本に束ねて絶縁処理します[2]。束ねた1本だけをZCTに通してから、ブラケットのアースへ接続します[2]。ブラケット側のネジ部は浮かせて絶縁し、ZCTの手前で接地されないようにします[2]。
同じ記録には、ほかの不良例も載っています[2]。一つは、シースがZCTを通らずにブラケットへ直接ネジ止めされていた例です[2]。ZCTへの通し方が逆向きだった例もあります[2]。配線は正しいのに、ネジ止め部分が接地されていなかった例もありました[2]。
PASの更新時にも2点接地の失敗例があります[9]。旧SOGのZ2にアースが付いていたため、作業者は新しいSOGにも同じようにアースを付けました[9]。新しい機種は内部でZ2と本体がつながる仕様で、2点接地となり誤作動のおそれが生じました[9]。一般に、シース処理の手直しは高圧ケーブル端末まわりの作業です。停電範囲や安全措置は、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
多点接地・循環電流・誘導による誤動作
信号の接地は1点が基本です[4]。2点で接地すると配線と大地でループができ、ノイズを拾いやすくなります[4]。ZCTを挟んだ両側でシールド層を接地した場合が典型です[4]。二つの接地点に電位差が生じるとシールド層に電流が流れ、GRのIoランプが点くことがあります[4]。
ZCTの二次側も、混触対策の接地は1点にします[4]。GRとDGRでは接地の取り方が異なります[4]。DGRで複数のZCTごとに接地をとると多点接地となり、不要動作の原因になります[4]。DGRの系統では、系統に一つしかない零相基準入力装置の二次側1点で接地します[4]。
ZCTと継電器の間の配線は、電磁誘導を避けるため単独配線にします[10]。数百Aの幹線が信号線の10cm以内を10m以上並走する場合、遮へい対策が必要です[10]。ZCTと継電器間の配線が10mを超えるときはシールド線を使います[10]。
ZCTの定格を超える負荷電流が流れると残留電流が生じ、Ioランプが点くことがあります[4]。100A定格の負荷でも、突入時に500〜600Aが数サイクル流れる例があります[10]。突入電流が見込まれる回路では、定格電流の大きいZCTを選びます[10]。遮断器の三相投入の不揃いも誤動作の原因で、50ms以下に抑えます[4][10]。
現場で確かめること
- シースの接地線がZCTを通っているか、向きは守りたい範囲と合っているか
- ZCTを通る前にブラケットで先に接地していないか
- ブラケットのネジ部は浮かせて絶縁テープで処理されているか
- ZCT二次側やDGR系統の接地が1点だけになっているか
- ZCTと継電器間の配線が大電流の幹線と並走していないか
- 突入電流に対してZCTの定格電流に余裕があるか
実際の作業は、各事業場の保安規程・作業手順書と、有資格者の判断に従ってください。
よくある質問
Q.ZCTはどこに取り付けるのですか?
A.貫通形ZCTは、引込ケーブルの負荷側端子の近くに施設します[6]。地下から立ち上がるケーブルでは、立ち上がり部分に付ける例があります[1]。ある技術者の構成例では、UGSやPASがある需要家は引込部分にZCTを設けていません[7]。ただしG付PASと受電側の地絡継電装置を併せて置く構成もあり、動作の協調に注意が要ります[3]。
Q.GRがもらい事故で動作するのはなぜですか?
A.GRは電流だけで判定し、零相電圧も方向も見ません[11]。このため構外の地絡でも、構内の対地静電容量を流れる電流でGRが動くことがあります[5]。シースをZCTに逆向きに通してもらい事故を避ける考え方もありますが、引込ケーブルの地絡も検出できなくなります[8]。モールドジスコンの物件のように、ケーブル地絡がもともと保護範囲外の場合に限った判断です[8]。
出典(このページのもとにした記事・動画)
本文の [番号] はこの一覧に対応しています。詳しい経緯や写真は、書いた技術者本人のサイトでお読みください。
- [1]ZCT 零相変流器とは?仕組み、配線、選定でんきメモ (memo-labo) / 2007年1月1日
- [2]ケーブルシースアースとZCTのくぐらせ方と保護範囲でんきメモ (memo-labo) / 2021年9月26日
- [3]ZCTとケーブルシールドの接地方法佐近電気管理事務所
- [4]多点接地、循環電流による地絡継電器の誤動作でんきメモ (memo-labo) / 2013年1月1日
- [5]方向性地絡継電器用試験器 GCR-miniぽんぽんタイガー(YouTube) / 2021年12月10日
- [6]零相変流器佐近電気管理事務所
- [7]高圧CVケーブルのシースアースとは?接地、原理、目的でんきメモ (memo-labo) / 2026年8月1日
- [8]モールドジスコンだった場合のケーブルシースアースとZCTのくぐらせ方と保護範囲でんきメモ (memo-labo)
- [9]戸上PAS Z2接地 仕様変更(KLT-P・KLT-PS)でんきメモ (memo-labo) / 2015年2月2日
- [10]地絡継電器の誤動作(電磁誘導・静電誘導・しゃ断器三相投入不揃い)でんきメモ (memo-labo)
- [11]方向地絡継電器の事故・トラブルでんきメモ (memo-labo)