雨を理由に点検そのものを中止するより、養生と段取りで実施している記録が多く見られます[1][2][3][4]。月次点検では扉を開けたときの盤内への吹き込みと記録類が濡れること、年次点検では継電器試験器を濡らさない置き場所が主な悩みどころです[1][2][3]。一方で、雨の日に何もかもやろうとすると危ない場面があるので無理はしない、という線引きを明言している技術者もいます[5]。実施の可否は現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
月次点検は雨でも回っている、気を使うのは扉を開ける瞬間
ある技術者の記録では、雨の日の月次点検について、傘をさしながらキュービクルの扉を開けることになり、高圧の充電部に触れてしまわないかが気になる、車や徒歩の移動もしにくい、できれば避けたい天気だと率直に書かれています[6]。それでもその日は予定どおり点検に向かっています[6]。
別の発信でも、扉を開ければ雨がかかる、記録用の紙やタブレット・パソコンが濡れる、傘をさしながらの作業は危険、といった雨の日に湧く気持ちがそのまま挙げられています[1]。そのうえで、それを理由に中止するのはもったいない、天気のせいにするのではなく雨を嫌がる気持ちの方を見直したい、という立場が示されています[1]。
手元の装備については、濡れた作業手袋は扱いにくく、機器を傷めたりネジを落としたりしやすいと書いている記録もあります[7]。一般に、高圧の充電部に近接する作業では絶縁用保護具(高圧ゴム手袋など)の着用が前提であり、素手で行うという選択肢はここには当てはまりません。何を着用するかは所属の保安規程と作業手順書に従い、有資格者の指示を受けてください。
年次点検(停電作業)は、養生するか・張らないかで判断が割れる
前日から準備した例があります。朝から雨予想だった始業前7時から8時半の年次点検に備え、前日の夕方のうちに雨養生の支度だけ済ませておいた例です[2]。当日は第1柱側のDGRを電柱カッパで覆い、リレー試験器は作業車の荷台に据えて、リレーボックスは試験者ごとビニールで雨を防いでいます[2]。キュービクル側は前面と後面をシートで覆い、屋根との固定には強力マグネットを使っています[2]。
逆に張らない判断もあります。4面体のCB形キュービクルで作業予定が1時間半程度という現場では、短時間の点検のためにブルーシートを張ること自体がひと仕事になるとして、あまり張っていません[3]。代わりに、車内に置いた試験器から30mの全要素コードを伸ばして、PASと過電流継電器を試験しています[3]。別の日の年次点検でも、午後から降り出した雨の中、車内で雨宿りしながら試験を実施し、足場台をテーブル代わりにしています[5]。作業時間が短い現場では養生そのものの手間が見合わないとして張らない判断もあり、現場や設備によって分かれます[3]。
シートそのものにも一長一短があります。薄手は軽くて扱いやすく畳むのも簡単で安価な一方、扉を開けたときに引っかかって破れやすく、強風であおられてハトメが破れることがあります[7]。厚手は高価で持ち運びが大変でも、破れにくく風にあおられにくいとされています[7]。固定はひもだと安いが縛るのが面倒で、雨や寒さで手がかじかむとつらく、磁石は着脱が簡単な反面、気づくと数が減っていたり強風で飛んでいったりします[7]。
試験器の置き方は機種の取説に従う必要があります。ある機種では、操作パネルを上面にして設置するよう警告され、横面に設置すると火災の原因になることがあると記載されており、側面の前後に吸排気口があるためと考えられています[3]。一方で、デジタル計器の試験器なら横置きで使えて腰に優しい、という使い方をしている記録もあります[5]。機種によって扱いが違うので、雨で置き場所が限られるときこそ取説の確認が要ります[3][5]。
雨天の工事立会いの例もあります。夜から降り出した雨の中での機器更新で、供給元のUGSを切り離し、検電・放電してから工事側に作業に入ってもらっています[8]。雨の日は滑りやすく、更新する機器や電線を濡らさないよう気を配る必要があり、晴天時の倍以上大変だったと記されていますが、事前に工程表を作って打合せを重ねていたため、引込ケーブルの引換接続と耐圧試験まで終えて予定時間内に復電しています[8]。
実例、雨のたびに足元が水浸しになる現場にポンプを置いた話
毎年請け負っている兼任主任技術者の現場で、排水溝が詰まっているために雨が降るとキュービクル周りに水が溜まり、歩くのも機材を並べるのも嫌だという状況が続いていました[9]。前年も同じだったため、家にあった不要なホースと燃料移送用のハンドポンプを持ち込んでいます[9]。排水ホースの出口側を水たまりより低い位置に取り回すのが要点で、ポンプを手で何度か揉んで流れを作ってやれば後は自然に流れ、この現場では20分程度で作業に支障のない状態まで排水できたとされています[9]。
同じ日、土ぼこりが多かったため盤内はブロアで飛ばしましたが、VCB上などの細かい溝は吹き飛ばしにくく、刷毛で払っています[9]。試しに使ったエアダスタースプレーはガス臭くて気持ち悪くなり、密室だと危ないと判断して以後使わないことにした、という失敗も記されています[9]。
水はキュービクル周りだけではありません。早朝の年次点検で、1号柱側とキュービクル側の2か所のハンドホールの水抜きを行った例では、1号柱側はかなり溜まっており、次の点検からどれくらいの期間で溜まるかを観察していく方針にしています[10]。キュービクル側は中にコンクリートブロックや廃材が入っていて底の水が抜けず、カッパと長靴を装備して中に入り、廃材を撤去してから抜いています[10]。雨の日の年次は、こうした水まわりの作業がそのまま点検メニューに加わります[9][10]。
雨の日の測定値をどう読むか
雨天の試験は時間が読みにくくなります。空気の比誘電率が約1なのに対し水は80であり、静電容量が大きいと充電と放電に時間がかかるという指摘があります[11]。太陽光の現場で、JIS適合の1mAメガーを雨天時に使うと太陽電池モジュールの絶縁抵抗測定に30分以上かかるため、165mAの絶縁耐力試験器を使う形に工夫して短時間で使用前自主検査を行った例が報告されています[11]。
一方で、値が低い・振れるときに雨のせいと決めつけない姿勢も要ります。1988年製のキュービクルの年次点検で、ブレーカー2次側の低圧絶縁抵抗が2MΩから3MΩの間で不安定に振れたケースでは、プローブを当てる角度を変えて切り分けたところ、ブレーカーの穴枠に触れると2MΩ、端子だけに当てると3MΩとなり、250Vレンジで筐体を測ると20MΩでした[12]。結論はブレーカー本体の絶縁低下による合成抵抗の影響で、樹脂の劣化に加え、ピンの被覆が抜けてむき出しになっていたことも原因のひとつでした[12]。水拭きで拭き上げてから測れば違ったかもしれない、とも振り返られています[12]。
汚損が絡む場合は清掃で戻ることがあります。風を通しても10MΩ程度と低いままだった設備で念入りに清掃したところ、LBSの稼働部を清掃した段階で絶縁がかなり改善しており、この稼働部は傘が小さく沿面距離が短いために悪くなりやすいのではないか、と推測されています[13]。雨と最高気温4℃という条件でも、予定どおり年次点検と特別清掃を実施し、きれいな設備は絶縁劣化のリスクが下がるという整理をしている記録もあります[4]。
雨の日にしか見えない不具合がある
雨天を積極的に使う考え方もあります。キュービクルに雨が吹き込んだ跡や、大水でキュービクルの基礎がえぐられている状況、山水の出方などは、晴れの日には気づけないもので、悪いところを早めに見つけて客先に伝えるという保守管理の目的からすれば、雨に当たった日はむしろラッキーと考えて、雨の日だからできることをやる方がよい、という立場です[1]。
実際、雨水の侵入経路として指摘されているのが換気扇です。天井換気扇は雨水が入りやすい傾向があり、側面に設置した方が入りにくいのではないかとされています[14]。屋外キュービクルで天井換気扇の真下に変圧器がある場合、変圧器の上に黒いシミが点々と付くことがあり、これは換気扇の羽根やシャッターに付いた粉じんや油分が結露水と一緒に落ちたものと説明されています[14]。
屋根の上も雨の日の見どころです。森の中にある現場の月次点検で、キュービクルの屋根に木の枝が覆い被さっているのを確認し、次回の枝打ちを計画に入れた例があります[15]。同じ日は点検を終えた帰り道が雷雨になったとも記されています[15]。一般に、こうした気づきは次回の点検計画や客先への提案につながる情報として記録に残しておくと役立ちます。
現場で確かめること
- 扉を開ける前に、吹き込みの跡・屋根の枝・基礎まわりの流出を先に見ておく[1][15]
- キュービクル周りとハンドホールの溜まり水を確認し、必要なら水抜きの段取りを組む[9][10]
- 作業時間が短い現場ではシート張り自体が手間になるため、養生を張るか車内試験で済ませるかを先に決める[3]
- 試験器を寝かせて置く前に、その機種の取説の設置向きと吸排気口の指示を確認する[3][5]
- 測定値が低い・振れるときは、プローブの当て方や機器本体の劣化を切り分ける[12]
- 雨で手元が滑る・視界が悪い状況では、その日の作業範囲を絞る判断を含めて有資格者と確認する[8][5]
実際の作業は、各事業場の保安規程・作業手順書と、有資格者の判断に従ってください。
よくある質問
Q.雨の日でもキュービクルの月次点検はやるのですか
A.雨の中でも予定どおり月次点検に出ている記録があります[6]。扉を開けたときの吹き込みや記録類が濡れること、傘をさしての作業への不安は共通して挙がりますが、それを理由に中止するのはもったいないという考え方が示されています[1][6]。実施の可否は現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
Q.雨天の年次点検でブルーシートの養生は必須ですか
A.前日から準備してキュービクルの前面・後面にシートをかけ、屋根との固定にマグネットを使った例がある一方[2]、作業が1時間半程度と短いのでシート張り自体がひと仕事になるとしてあまり張らず、車内から30mのコードを伸ばして試験した例もあります[3]。作業時間が短い現場では養生の手間が見合わないとして張らない判断もあり、現場や設備によって分かれます[3]。
Q.雨の日は絶縁抵抗が低く出るのですか
A.雨天では水の比誘電率の高さから静電容量が大きくなり、充放電に時間がかかるため試験時間が延びるという指摘があります[11]。ただし値が低い・不安定なときが必ず雨のせいとは限らず、プローブの当て方を変えて切り分けた結果、ブレーカー本体の絶縁低下が原因だった例もあります[12]。汚損が原因なら清掃で改善することもあります[13]。
出典(このページのもとにした記事・動画)
本文の [番号] はこの一覧に対応しています。詳しい経緯や写真は、書いた技術者本人のサイトでお読みください。
- [1]雨の日、点検中止はもったいない!!ゆうじの「電気保安の学校」(YouTube) / 2022年7月13日
- [2]雨の年次点検Denkikanri3y's Blog / 2026年9月15日
- [3]今年の春年次点検は雨が多いとある電気管理の位相 / 2025年6月10日
- [4]寒い中、キュービクル特別清掃作業を実施森電気管理事務所 / 2024年2月23日
- [5]雨でも年次点検とある電気管理の位相 / 2025年5月15日
- [6]パワーヒューズの予備についてゆうじの「電気保安の学校」(YouTube) / 2022年4月14日
- [7]雨の日の電気点検の注意点・ブルーシート・養生でんきメモ (memo-labo)
- [8]新横浜でキュービクル機器更新工事立ち会い森電気管理事務所 / 2025年5月12日
- [9]キュービクル周辺水抜きと、手元の埃払いとある電気管理の位相 / 2025年6月20日
- [10]破壊の残骸とある電気管理の位相 / 2025年5月1日
- [11]雨天でのDC絶縁耐力試験実施電気管理技術者の交流掲示板 / 2023年9月20日
- [12]絶縁抵抗値の変動原因とある電気管理の位相 / 2026年6月10日
- [13]キュービクルの清掃を行いました。点検日和 / 2012年6月11日
- [14]換気扇の吸気・排気でんきメモ (memo-labo)
- [15]今日の月次点検Denkikanri3y's Blog / 2025年7月1日