メガーで低い値が出ても、絶縁不良とは限りません。電線が濡れた盤内の床に接して値が下がり、離すと回復したケース(被覆の損傷も疑われ、経過観察が必要な例です)[1]や、ブレーカー本体の低下した絶縁を一緒に測っていたケース[2]があります。また、負荷をつないだまま線間を測ると0MΩと表示されるという説明もあります[3]。逆に、高圧回路を低い印加電圧で測って異常なしと判断し、再投入したところ波及事故になった例もあるため[4]、測定条件・湿気・接続機器を一つずつ確かめてから結論を出すことが大切です。
まず測定条件を疑う(当て方・極性・出力電圧)
ある技術者は、古いキュービクルの低圧回路でブレーカー2次側を測ったとき、値が2〜3MΩの間で定まらないことに気付きました[2]。プローブがブレーカーの穴枠に触れたままだと2MΩ、端子だけに当てると3MΩと、当て方によって指示が変わっていたそうです[2]。値が不安定なときは、測りたい導体以外に触れていないかを最初に確かめると切り分けが早くなります。
接続の向きも確認します。資料では、アース側をプラス、ライン側をマイナスにする接続がJIS C 1302で定められており、この極性のほうが対地の不良を見つけやすいと説明されています[5]。また、メガーの出力をテスターで確かめた実験では、125Vレンジで133V、250Vレンジで266Vと設定値よりやや高く出ていました[5]。電池の消耗や経年劣化で出力が下がることを見越した設計だろうと推測されています[5]。
PCS容量が3kWを超える太陽電池モジュールを、JIS適合の1mAメガーで雨天時に測ると30分以上かかったという記録があります[6]。一般に、指示が落ち着く前の値で判断せず、測定後の放電や残留電荷の処理も現場の手順書どおりに行ってください。
湿気・雨・水が値を下げるケース
ある技術者によれば、晴れの日は高圧で2000MΩ以上、低圧もほぼすべて100MΩ以上と、回路ごとの差が出にくいそうです[7]。ところが雨の日には高圧でも10〜20MΩ程度まで下がり、前年は見えなかった低下がいくつも見つかることがあるといいます[7]。そのため雨の日の点検を中止せず、晴天では隠れている弱点を見つける機会ととらえる考え方も紹介されています[7]。
一般に、天候による一時的な低下なのか、もともとの弱点が表に出たのかを見分けるには、過去の記録と並べて比べるのが有効です。
高圧ケーブルでは敷設環境も手がかりになります。ハンドホール内がほぼ乾いて常時水没しておらず、ケーブルが結束で底から浮かせてある現場では、5kVを印加した劣化診断で良好な結果が出たと報告されています[8]。
つないだままの機器・負荷が値を下げるケース
線間を測るとき、電球がつながったままスイッチが入っていると、メガーの電圧が電球にかかって0MΩと表示されます[3]。スイッチを切るなどして負荷を回路から切り離してから測る必要があります[3]。漏電ブレーカーは電線を外さずに測ると内部回路が故障するおそれがあり、インバーターは主回路の配線をすべて外し、端子を一括短絡してから対地に印加する手順が示されています[3]。
電話、パソコン、通信機器、自動ドア、空調機、エレベーターなどはメガー測定で故障しやすい機器として挙げられており、切り離して測るのが理想とされています[9]。ただし、点検時にすべてのコンセントが抜けているかを確かめるのは難しいのが実情です[9]。故障を防ぐ目的で50V以下のメガーを使う方法は技術基準に適合しないと指摘されています[9]。さらに、故障の原因はメガーではなく低圧ブレーカーを開放したときのサージ電圧だという見方もあります[9]。
一般に、サージ吸収器などの保護機器が回路に残っていると測定値に影響することがあるため、事前に単線結線図などで何がつながっているかを把握しておきます。
現場の実例:0.01MΩ以下から50MΩ超に戻った立体駐車場の回路
ある技術者が年次点検で低圧回路の絶縁抵抗を測ったところ、立体駐車場の回路で0.01MΩ以下という値が出ました[1]。復電後に追跡調査を行い、立駐内の制御盤のブレーカーで測ると負荷側に異常はなく、引込側の配線が怪しいと絞り込みました[1]。
現場責任者から図面を出してもらい、建物の間にあるボックスを確認すると、プルボックスではなく中継の分電盤でした[1]。区間を分けて測った結果、中継ブレーカーから制御盤までの配線に問題があると判明しています[1]。屋上と地上に分かれた作業員とトランシーバーで連絡を取り合ったことで、ブレーカーの入切をしながらの探査がはかどったそうです[1]。
盤内で奥の赤い電線に触れると、値が0.01MΩから1MΩへ変わりました[1]。原因は、濡れた盤内の床にこの電線が接していたことでした[1]。電線を床から離すように曲げると50MΩ超まで回復しています[1]。ただし被覆の裏側はざらついており、施工時の傷か劣化によるひび割れかは判断がつかず、架橋ポリエチレンは劣化でひび割れやすいので注意が要ると記録されています[1]。
別の現場では、値のふらつきの原因の一つが劣化したブレーカーピンでした[2]。被覆が抜けてピンがむき出しになり、測定対象とブレーカーの両方に触れていたのです[2]。この技術者は、接着剤を薄く塗って抜けを防いだうえで熱収縮チューブで被覆を作り直しています[2]。ブレーカー本体は250Vレンジで20MΩまで下がっており、今後さらに低下したり動作が怪しくなったりしたら交換を提案する方針だそうです[2]。
高圧回路では「低く出ない」ことにも注意
高圧回路をDC1000Vのメガーで測って10MΩと問題なく見えたのに、DC6000Vのメガーで測り直すとVCTが0Ωだった事例があります[4]。地絡継電器の動作でPASが開いたあと、1000Vのメガーで異常なしと判断して再投入し、波及事故に至った例が何度もあったとされます[4]。特に地絡継電器の動作でPASが開いたあとの調査は、DC1000Vでは不良を見逃すおそれがあり、ハイボルトメガーで調べるべきだとされています[4]。再投入の判断は、手順書と有資格者の判断に従ってください。同じ資料では、1000Vで8MΩ、6000Vで1MΩだった場合、管轄の電力会社に報告して対応を相談するという対応例も示されています[4]。
なお、高圧ケーブルの劣化診断の方法の一つとして、1000〜2000Vの絶縁抵抗計で導体の絶縁を測る方法を挙げた保守解説もあります[10]。
ケーブルのシースアースの値が低いときは、PASやUGS側で絶縁してあるテーピングの不具合や、金属箱への接触が原因のことがあります[11]。再投入や停電範囲の判断は安全と波及事故に直結するため、自分だけで決めず、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
現場で確かめること
- プローブが端子以外(ブレーカーの枠など)に触れていないか、むき出しのピンが測定対象に接していないか
- 電線や端末が濡れた床・金属箱に接していないか、当日の天候と過去の記録はどうか
- 負荷、電子機器、漏電ブレーカー、インバーターが切り離されているか
- レンジ・極性・印加電圧が測定対象に合っているか
- 区間を分けて測り直し、低下している範囲を絞り込んだか
- 高圧の判断や再投入は、手順書と有資格者の判断に沿って行っているか
実際の作業は、各事業場の保安規程・作業手順書と、有資格者の判断に従ってください。
よくある質問
Q.雨の日に絶縁抵抗が低く出るのは不良ですか?
A.晴天では高圧で2000MΩ以上出る設備でも、雨天時に10〜20MΩ程度まで下がることがあると報告されています[7]。その一方で、雨の日だからこそ晴天では隠れている弱点が見つかるという見方もあります[7]。過去の記録と比べて判断してください。
Q.機器の故障が心配なので50Vメガーで測ってもよいですか?
A.故障防止のために50V以下のメガーを使う方法は、技術基準に適合しないと指摘されています[9]。電子機器を切り離して測るのが理想とされています[9]。
出典(このページのもとにした記事・動画)
本文の [番号] はこの一覧に対応しています。詳しい経緯や写真は、書いた技術者本人のサイトでお読みください。
- [1]低圧600V CV-3Cケーブルの絶縁不良とある電気管理の位相 / 2025年11月25日
- [2]絶縁抵抗値の変動原因とある電気管理の位相 / 2026年6月10日
- [3]線間(相間)絶縁抵抗測定でELB、インバーター、電力量計が故障でんきメモ (memo-labo)
- [4]絶縁抵抗測定で印加電圧を間違い事故でんきメモ (memo-labo)
- [5]50~1000V 低圧絶縁抵抗測定とは?目的、基準、注意点でんきメモ (memo-labo)
- [6]雨天でのDC絶縁耐力試験実施電気管理技術者の交流掲示板 / 2023年9月20日
- [7]雨の日、点検中止はもったいない!!ゆうじの「電気保安の学校」(YouTube) / 2022年7月13日
- [8]6kV CVT 矢崎2016年ケーブル(水没なし)劣化診断結果とある電気管理の位相 / 2025年3月31日
- [9]低圧絶縁抵抗測定で機器が故障する理由・50Vメガーでんきメモ (memo-labo)
- [10]高圧ケーブルの保守・点検方法佐近電気管理事務所
- [11]遮へい銅テープ(シールド)の絶縁不良・断線でんきメモ (memo-labo) / 2022年5月26日