保護協調の整定値は、OCRなら契約電力から求めた負荷電流が基準になります[1][2]。構内の地絡継電器どうしは、電流値ではなく動作時限の差で協調をとります[3]。配電用変電所とは、感度(電流・電圧)と時間の両方で協調をとります[4]。動作時間は配電用変電所との協調で最も重要な項目です[4]。そのため整定値は電力会社と協議して決め、設置者の都合では変更できません[5]。
OCRの整定値の決め方:限時要素と瞬時要素
OCRの限時要素は、通常の負荷変動では動作しない値に整定します[1]。ある技術者は、契約電力の負荷電流の150%程度を目安にしています[1]。ある電力会社との図面協議の例では、契約最大電力の110〜150%・時限1秒以下が整定例として示されています[2]。協議資料の算出式は、力率0.9と係数1.1〜1.5を使いCT比で二次側タップに換算します[2]。
瞬時要素の目安は、記録によって幅があります[1][2]。ある技術者は、設備容量の合計の10倍で瞬時要素を計算しています[1]。800kVA・CT比100/5の例では、一次側の約70Aを10倍して700Aとします[1]。二次側に換算すると35Aとなり、直近上位の40Aタップを選びます[1]。一方で図面協議の例は、契約最大電力の500〜1500%と広い範囲を示しています[2]。何を基準に何倍とするかは、現場や設備によって判断が分かれます[1][2]。
限時特性の種類も、下位機器との協調に関わります[1]。超反限時(EI)はMCCBやヒューズと特性が合い、構内の下位保護と協調をとりやすい特性です[1]。強反限時(VI)は、配電線や変圧器の保護に向いています[1]。電力会社が協議の際に、OCRのi-t特性の提出を求めることもあります[2]。
GR・DGRの整定値と配電用変電所との協調
GRの電流整定は、通常0.2Aです[6]。感度が良すぎて微弱な電流で動作する場合は、0.4Aに上げる例があります[6]。0.6A以上にすると配電用変電所の保護範囲に近づき、協調がとれなくなるおそれがあります[6]。0.6A以上が必要な場合は、電力会社に相談します[6]。
構内のケーブルが長いと、ケーブルの充電電流でGRが不必要動作することがあります[6]。ある技術者は、充電電流がGR感度電流の半分以上ならDGRを選ぶ方針です[6]。充電電流100mA以上が目安で、ケーブル長ではおよそ60m以上に当たります[6]。DGRは構内の地絡だけで動作するため、構外の地絡によるもらい事故を避けられます[4]。
DGRの標準的な整定は、零相電流0.2A・零相電圧5%・動作時間0.2秒です[4]。系統の残留分で零相電圧の表示LEDが点く現場では、零相電圧を7.5%以上にします[4]。多回線の母線用では、動作時間を0.4秒以上とする場合もあります[4]。
動作位相は、非接地系で遅れ30°、リアクトル接地系で遅れ60°が目安です[4]。リアクトル接地系は四国電力管内と北陸電力管内の一部にあり、管轄の電力会社への確認が必要です[4][7]。最大感度位相角の標準値は機種で異なり、非接地系で45°とする機種も30°とする機種もあります[7]。
動作時間の差と慣性特性の考え方
地絡保護の協調は、電流整定値ではなく動作時限でとります[3]。電路の末端ほど速く、電源側ほど遅く動作するよう時限タップに差をつけます[3]。一般の遮断器では、各段に0.3秒以上の差をつければ協調がとれます[3]。50Hzで5サイクル定格の遮断器なら、遮断までに約0.1秒かかる計算です[3]。
受電盤GRの時限は、構内にサブ変電所がなければ0.2秒が一つの例です[3]。サブ変電所がある場合は、受電盤GRを0.5秒、き電盤GRを0.2秒とします[3]。参考情報として、関東地区の配電側DGRは0.9秒・Io0.2A・V0 10%という話も紹介されています[3]。太陽光設備のOVGRは配電用変電所DGRより長い時限とし、1秒を指定される例が多くあります[8]。
慣性特性は、公称動作時間より短く入力が途切れたとき、接点が閉じない限界を示すものです[3]。JISの試験では、零相電圧を整定値の150%、零相電流を400%にします[3]。位相を最高感度角に合わせて50msだけ加え、継電器が動作しないことを確認します[3]。出力を少しずつ延ばし最小慣性動作時間を測れば、特性の変化を追えるという意見もあります[3]。慣性特性は遮断器の三相投入不揃いによる誤動作にも関わり、不揃いは50ms以下に抑えます[9]。
現場の実例と想定されるリスク:整定ミス・戻し忘れ・誤動作
ある技術者の記録には、整定値の設定ミスによる波及の例があります[3]。配電用変電所のGRが、需要家側のSOGより先に動作しました[3]。同じ記録には、主変UGSと2変送りGRの整定を見直した例も載っています[3]。変更前は、主変UGSが0.2A・0.2秒、2変送りGRが0.1A・0.2秒でした[3]。変更後は主変UGSを0.5秒に延ばし、2変送りGRを0.2A・0.2秒として時限差をつけています[3]。
別の記録では、停電点検後にVCBを投入した際、励磁突入電流でOCRの瞬時要素が動作しました[5]。VCBはそのまま開放されています[5]。地域停電後の再送電でも瞬時要素が動作すれば、担当者の到着まで復電できないおそれがあります[5]。それでも整定値は電力会社との協議で決まるため、突入電流を理由に独断で変更はできません[5]。記録者は、瞬時要素の整定を勝手に変えると配電側が先に動作し、波及事故になりうると指摘しています[5]。
試験のための整定変更の戻し忘れも、協調を崩す原因になります[10]。時間ダイヤルを1から10に変えたまま戻し忘れると、過負荷時に配電側のOCRが先に動作しかねません[10]。3から1に下げたまま忘れると、通常の過負荷でもVCBが開放して停電するおそれがあります[10]。そのため瞬時要素をロックしたままの戻し忘れが、最も危険だと記録されています[10]。
DGRでは、雷電流による不必要動作も起こります[11]。誘導雷でDGRだけが動作した状態は、継電器の故障とは限りません[11]。受電状態でSOG制御装置を試験すると、配電線の残留電圧が試験電圧に重なります[11]。残留電圧が大きいと正常な値で動作しないため、開閉器を開放して試験する手順が示されています[11]。
電力会社との協議と整定変更・試験の注意点
UGSやPASの整定値を変えるときは、必ず事前に電力会社へ問い合わせます[3]。新設時の図面協議では、保護継電器の整定値が確認項目に入ります[2]。竣工試験でも、保護継電器の動作試験の結果が確認されます[2]。
OCRの整定つまみは、中間位置に合わせると動作が不定になります[5]。稼働中の整定変更は不要動作のおそれがあるため、避けるべきだとされています[5]。周波数設定のディップスイッチが誤っていると、動作値がわずかにずれることがあるため、試験前に設定を確認します[5]。引き外し用電源をつなぐ際は、電源元が電力側に印加されないか、別回路に分岐していないかも確かめます[4]。
ある事務所は、竣工検査でダイヤル10と整定ダイヤルの両方を試験しています[12]。年次点検では整定ダイヤルだけを試験し、前回の動作時間と比べて良否を判断します[12]。一般に、整定変更や継電器試験の進め方は、現場の手順書と有資格者の判断に従う必要があります。
現場で確かめること
- 契約電力とCT比から求めたOCRタップ値と、現状の整定が合っているか[1][2]
- 構内の充電電流に対して、GRとDGRの選定が適切か[6]
- 受電盤・き電盤・配電用変電所の間に動作時限の差があるか[3]
- 試験後に時間ダイヤル・瞬時ロック・瞬時タップを元に戻したか[1][10]
- OCRの周波数設定(50Hz/60Hz)が受電地域と合っているか[5]
- 整定を変える前に、電力会社へ協議・問い合わせをしたか[3][5]
実際の作業は、各事業場の保安規程・作業手順書と、有資格者の判断に従ってください。
よくある質問
Q.OCRの限時要素は契約電力の何%に整定しますか?
A.ある技術者は、契約電力の負荷電流の150%程度を目安にしています[1]。ある電力会社との図面協議の例では、110〜150%・1秒以下が示されています[2]。どの値を採るかは現場や設備によって判断が分かれるため、電力会社との協議で決めます[2][5]。
Q.GRとDGRはどう使い分けますか?
A.構内の充電電流がGR感度電流の半分以上なら、方向性のDGRを選ぶ考え方があります[6]。充電電流100mA以上、ケーブル長でおよそ60m以上が目安です[6]。DGRは構内の地絡でのみ動作するため、もらい事故を防げます[4]。
Q.地絡継電器の時限差は何秒とればよいですか?
A.一般の遮断器なら、各段に0.3秒以上の差で協調がとれます[3]。サブ変電所がある構内では、受電盤GRを0.5秒、き電盤GRを0.2秒とする例があります[3]。配電用変電所との時限協調には、電力会社との協議が必要です[4]。
出典(このページのもとにした記事・動画)
本文の [番号] はこの一覧に対応しています。詳しい経緯や写真は、書いた技術者本人のサイトでお読みください。
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