非常用発電機の月次点検で運転することは、法令に明記されてはいないとされます。ただし、保安規程に運転の記載があれば実施が必要です[1]。電気事業法の点検は保安規程に沿った月次・年次点検で、月次は外観確認、年次は自動起動・停止、蓄電池、絶縁抵抗、短時間の試運転などが中心です[2]。定格の30%程度で連続運転する負荷試験を、消防点検として行っている例があります[3][4]。
電気事業法の点検と消防法の点検の違い
自家発電設備の点検に関わる法令としては、電気事業法、消防法、建築基準法の三つが挙げられています[2]。電気事業法では、事業用電気工作物にあたる自家発電設備は常用か非常用かを問わず対象です。点検の基準は設置者が保安規程で自ら定め、それに基づいて点検します[2]。対象となるのは、ディーゼルなどの内燃力は出力10kW以上、ガスタービンは出力に関係なくすべてとされています[2]。
消防点検では、内部観察の代わりに年1回の負荷試験を行っている事業場があります[4]。負荷試験を専門業者に任せている需要家もあります。消防設備士や消防設備点検資格者が必要とみられるものの、どの種類の資格が該当するかは確認できていない、という技術者の記録もあります[5]。
一般に、電気管理技術者は保安規程に基づく点検を受け持ち、消防点検は別の業者が行う形がよく見られます。自分の点検がどの法令と規程に基づくのかを、需要家ごとに確認しておくことが大切です。
月次点検で発電機を運転するかどうか
ある解説では、月次点検の内容は発電機と励磁装置の外観確認とされ、試運転は年次点検の項目に入っています[2]。別の記録では、保安規程に運転の記載がない小型ガスタービンでも、メーカーが毎月10分の無負荷運転を推奨しているため実施している例があります[1]。反対に、騒音や排ガスへの苦情から設置者に止められた現場では運転しません。報告書は書ける範囲だけ記入し、目視点検と記録するそうです[1]。
毎月必ず運転確認をしているという技術者もいます[6]。月次点検で運転するかどうかは、現場や設備によって判断が分かれます。運転する理由としては、長く止めたままだとオイルが下がって錆が出ることが挙げられています。また、短時間で止めると結露した水分がオイルに混ざり、乳化する恐れがあるとも言われています[1]。
運転前に確認したいのが、建物側の連動です。ある救急病院では、発電機の起動が商用停電の信号としてビル管理システムに入っていました。そのため試験運転でエレベーターや空調などが停電モードに切り替わり、大混乱になったそうです[1]。事前に連動の有無を確認し、解除の手順を設備管理者と決めておく必要があります[1]。
現場の実例:月次の試運転で界磁異常、どう対応したか
ある技術者が月次点検で試運転をしたところ、発電電圧の表示が41Vしかありませんでした。保護回路の遅延タイマーが働いて約30秒後に界磁異常の警報が出て、発電機は停止しました[6]。実際に測っても41Vだったため、表示不良ではないと判断しています[6]。
その後、ガラス管ヒューズの導通、界磁回路の絶縁抵抗と導通を確認し、AVR基板も目視で点検しました。半導体を壊さないよう、AVR側にはメガを当てないようにしたそうです[6]。それ以上の原因調査や修理はメーカーなどの専門業者に相談するしかないとして、写真付きの報告書でお客様に報告しています[6]。実はその前日の消防点検でも同じ不具合を指摘されていたそうです[6]。
別の現場では、専門業者による負荷試験のあとに、冷却水、エンジンオイル、オイルエレメント、エアエレメントが交換されていました[5]。電気管理技術者が指摘してもなかなか進まない消耗品の交換が、消防の観点から指摘されると進みやすいのかもしれない、という見方も記録されています[5]。
月次点検の具体的な手順例
ある技術者は、まず始動用蓄電池の外観と液量を見て、減っていれば精製水を足しています。あわせて触媒栓と蓄電池本体の交換推奨時期も確認します[7]。続いて燃料残量、ラジエーターの冷却水、エンジンオイルの量と色を見ます。ラジエーターの蓋は締め忘れないよう手に持ったまま確認するそうです[7]。
消防点検業者が入ったあとにブレーカーが切れたままになっていたことがあり、毎回すべてのブレーカーの入切を確認しています[7]。運転は試験モードの手動で行い、発電電圧、周波数、充電器電圧、蓄電池電圧、水温、回転数、油圧を確認します[7]。停止は手動で行わず、自動モードに戻して自動停止することを確かめます。自動モードへの戻し忘れを防ぐためです[7]。
目視では、燃料タンクが錆びて穴が開き、燃料が漏れていたのを見つけた例があります[7]。避難所になる施設では、古い燃料を入れっぱなしにすると発電機を傷めることがあるため、ときどき入れ替えることも勧められています[8]。
年次点検と負荷試験で見ること
電気事業法の年次点検の例としては、次の項目が挙げられています。自動起動・自動停止装置の状態、接続部や接地部の緩み、内部蓄電池の漏れ、絶縁抵抗測定、起動・停止装置の動作、5分程度の無負荷での試運転です[2]。
負荷試験の実例では、負荷を10%、20%、30%と段階的に上げ、30%で20〜30分ほど連続運転しています[4]。定格200kVA・525Aの発電機では157A程度を目標にし、24分間運転しました。発電機が地下にあったため、屋外の負荷抵抗器まで40mのケーブルを3条敷設しています[9]。運転時間を15〜30分程度とする解説もあり、時間の目安は資料によって幅があります[10]。
模擬負荷試験なら施設を停電させずに負荷を安定してかけられます。ただし、非常用設備が実際に動くかどうかは確かめられません[10]。年次停電の際に、保安回路へ発電機から給電し続ける医療施設もあります。事前に活線メガで測定し、CTセンサが入らない幹線や演算値が判定基準を超えた回路だけ、当日ブレーカーを切ってメガを当てています[11]。停電範囲や切替操作、充電部の扱いは、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
始動用蓄電池の扱い
まず、蓄電池がベント式か制御弁式かを確認します。ベント式は電解液が減っていくため、上限と下限の目印を見ながら精製水を補充します[2]。負荷試験の際には、蓄電池の電圧や内部抵抗、クランク電圧を測っている例もあります[4][9]。
新しめの現場に多い白い一体型12Vの蓄電池では、製造から5年ほどで交換推奨時期が来るものがあります。推奨時期が表示されているため、指摘事項に挙げているそうです[12]。交換推奨時期を大幅に過ぎた制御弁式蓄電池の本体にクラックを見つけた例もあります。この技術者は、発煙・発火や腐食性ガスの発生の恐れがあるとして指摘に加えています[13]。指摘しても費用の問題でなかなか交換されない現場もあり、指摘後も外観の経過観察を続けることが大切です[12][13]。
現場で確かめること
- 保安規程に発電機の運転や試運転の記載があるか
- 発電機の起動がビル管理システムや停電信号と連動していないか
- 試験後に自動モードへ戻り、各ブレーカーが正しい位置にあるか
- 始動用蓄電池の方式、液面、交換推奨時期、外観の割れ
- 燃料残量と燃料の古さ、冷却水やオイルの漏れ跡
- 消防点検の実施状況と、そこで指摘された内容
実際の作業は、各事業場の保安規程・作業手順書と、有資格者の判断に従ってください。
よくある質問
Q.電気事業法で非常用発電機の負荷試験は必要ですか?
A.電気事業法の年次点検の例として挙げられているのは、5分程度の無負荷での試運転などです[2]。30%程度の負荷をかける試験を、消防点検として行っている例があります[3][4]。
Q.月次点検で運転しないと問題になりますか?
A.法令に運転義務は明記されていないとされますが、保安規程に記載があれば実施が必要です[1]。苦情などで運転できない場合に、目視点検と記録している例もあります[1]。
出典(このページのもとにした記事・動画)
本文の [番号] はこの一覧に対応しています。詳しい経緯や写真は、書いた技術者本人のサイトでお読みください。
- [1]非常用発電機の法令とは?月次点検で運転する必要ある?でんきメモ (memo-labo)
- [2]非常用発電機の月次点検・年次点検 蓄電池点検でんきメモ (memo-labo)
- [3]非常用発電機の負荷運転試験Denkikanri3y's Blog / 2025年12月20日
- [4]非常用発電機の負荷試験Denkikanri3y's Blog / 2025年2月27日
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