一般に、普通のテスターは接地抵抗の測定に向かず、専用の接地抵抗計を使います。2点間に電流を流すだけの測り方では、2つの接地極の抵抗を合わせて測ってしまうためです[1]。接地抵抗計の測り方には、3極法・簡易2極法・クランプ式があります[2][3][1]。テスターは、接地抵抗計のリード線の断線を調べる場面で役に立ちます[4]。
普通のテスターで接地抵抗が測れない理由
一般に、普通のテスター(マルチメーター)はリード線を当てた間の抵抗を示す測定器です。接地抵抗計は、測りたい接地極Eと電流極Cの間に電流を流して測定します[1]。E-C間の値だけで計算すると、Eの抵抗にCの抵抗が上乗せされます[1]。
接地抵抗計は、EとCの中間に電位極Pを打ってE-P間の電圧を測ります[1]。E-C間の電流とE-P間の電圧を組み合わせると、Eだけの接地抵抗が求まります[1]。
ある技術者は、接地抵抗計の故障を疑う前にリード線の断線を調べ、テスターで導通を確かめています[4]。テスターが無いときは、技術者は接地抵抗計のE端子とC端子にリード線をつなぎます[4]。技術者はリード線の先端どうしを短絡させ、接地抵抗計のレンジをΩに合わせて測定ボタンを押します[4]。表示が0Ωなら導通があり、無限大ならどちらかのリード線が断線しています[4]。
3極法・簡易2極法・クランプ式の使い分け
3極法は、接地極E・電位極P・電流極Cを一直線に並べて測る方法です[1]。各極の間隔は5m~10m程度を取ります[1]。Pの位置はEとCを結ぶ線上が望ましく、30度程度のずれまでは許容できるとされています[1]。
簡易2極法は、EとPの2極で測り、CはPと短絡して同じ補助極につなぎます[3]。補助極には、商用電源のニュートラル側(B種接地)を借ります[3]。ニュートラル側を借りられるコンセントは、対地電圧300V以下のものとされています[3]。ブレーカ二次側から借りる場合は、対地電圧150V以下のニュートラル側配線に限られます[3]。
資料の例では、簡易測定用のテストリードとしてHIOKI L9787を使います[3]。ほかの測定コードを使うと感電する恐れがあると注意されています[3]。簡易2極法の主な用途はD種接地(判定基準100Ω)の確認で、A・B・C種の測定には使えません[3]。
簡易2極法では、補助極をつなぐ前に検電器でニュートラル側かを確かめる手順が示されています[3]。ある機種は、2極法に設定すると測定電流を4mA以下に抑えます[3]。ただし感度電流が10mA未満の漏電リレーや漏電遮断器は、測定電流で動作する可能性があります[3]。商用電源につなぐ作業のため、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
クランプ式は、接地線を挟むだけでA種からD種までの接地抵抗を測れます[2]。停電作業や補助極の打ち込みをせずに測れる点が、クランプ式の特長とされています[2]。一方でクランプ式は接地ループが無いと測れず、避雷針のような単独の接地には使えません[2]。多重につながる接地極の数が多く、抵抗が低いほど測定値は正確になります[2]。
補助極が打てない現場で技術者が取った方法
キュービクルの周囲が舗装された事業場で、年次点検を行った技術者の例です[5]。技術者は以前、コンクリートの上に補助極を置き、布をかぶせて水をまいていました[5]。コンクリートに苔が生えていたため、技術者は苔に補助極を挿して周りに散水しました[5]。補助極の接地抵抗は、測定に十分な値まで下がりました[5]。
地下電気室に接地極がA種とB種の2本しか無い場合は、ドアのヒンジを補助極に使う方法があります[6]。ドアのヒンジは、地中に埋まった建物の構造体の金属につながっているためです[6]。ビルの屋上では、清掃作業のロープを固定する丸環も補助極の候補です[6]。電柱の支線や金属の水道管を使う方法もあります[7]。
ただしA種・B種・D種の接地が共用で構造体につながる建物では、ドアのヒンジは補助極に使えません[6]。共用接地の建物では、測定用の延長線を屋外まで引き、地面や金属の埋設物につなぎます[6]。
補助極の抵抗の上限は、約1kΩ~10kΩ程度なら測定可能という記録があります[1]。FT6031-50は、補助極の許容抵抗が50kΩです[7]。上限は接地抵抗計の機種で条件が異なり、現場や設備によって判断が分かれます[7]。
ある技術者は、畑に1.5mのアース棒を試験用の接地極として打ちました[8]。技術者は接地極から10m先に電位極、さらに10m先に電流極を置いて測りました[8]。電位極を動かして極どうしの間隔を詰めると、測定値は大きく変化しました[8]。実際の現場では、接地極の埋設位置が分かりません[8]。技術者は、補助極を十分に離して位置を変えながら測るよう勧めています[8]。
ゼロアジャストで合否が変わった校正の実例
ゼロアジャストは、測定コードを短絡させて表示を0に合わせる調整です[4][9]。ゼロアジャストは、測定コードや接続部の抵抗の影響を取り除きます[4]。ある技術者は3線をまとめて短絡できるクリップを用意し、校正時のゼロ調整に使っています[10]。
別の技術者は、校正で預かったデジタル接地抵抗計FT6031-50で5Ωを測りました[9]。表示は5.17Ωで、許容範囲の4.85~5.16Ωを0.01Ω超えていました[9]。技術者が3極を短絡して測ると、0.18Ωが残っていました[9]。技術者は0Ω ADJボタンを押し、表示を0.00Ωに合わせました[9]。再測定した値は4.99Ωで、許容範囲に収まりました[9]。
FT6031-50の取扱説明書は、測定前のゼロアジャストを必ず実行するよう求めています[9]。校正を行った技術者は、A種の10Ωぎりぎりの判定ではゼロアジャストの有無が良否に響きそうだと見ています[9]。
機器側をつないだまま測ると値が変わる
機器をつないだまま測ると、機器側の接地抵抗が合算された値になります[11]。機器の移動や取り外しで基準値を超える可能性があるため、極側単体で測るべきだという意見があります[11]。
機器側の合算とは別に、A種の接地極を2極合わせて測った現場の例を紹介します[12]。年次点検で単極測定を指定された技術者は、接地端子のボルトを外して1本目を測りました[12]。1本目の値は10.67Ωで、A種の10Ω以下をわずかに外れていました[12]。
技術者が10.67Ωを報告すると、報告先は2極を合わせて測るはずだと答えました[12]。技術者がもう1本の接地線を測ると27.3Ωで、2本を一緒に測ると7.88Ωに収まりました[12]。技術者は、過去に規定値超過で接地極を追加したのかもしれないと推測しています[12]。接地極を合わせて測るかどうかや接地線の切り離しは、現場の手順書と有資格者の判断に従ってください。
アナログ機とデジタル機の違いと選び方
現在の接地抵抗計は、デジタルの全自動タイプが主流です[13]。ある技術者は、KEW 4105DLBTの測定スピードがFT6031-50より速い点を利点と見ています[12]。
ツマミを回して検流計を合わせる手動式のアナログ機は減っており、終売の機種もあります[13]。ある技術者は、手動式を新品で欲しい人にET-5かFT3151の早めの入手を勧めています[13]。
アナログ機のFT3151は、補助極PとCの抵抗値を挿し替えなしで測れます[14]。FT3151は通常575Hzで測り、指針がふらつくときは600Hzに切り替えます[14]。600Hzに切り替えると、高調波の影響を受けにくくなるとされています[14]。
現場で確かめること
- 測定前に測定コードを短絡してゼロアジャストを行ったか[9]
- 補助極を十分に離し、位置を変えても値が変わらないか[8]
- 簡易2極法の対象がD種接地か、漏電遮断器の感度電流はいくつか[3]
- クランプ式で測る接地線に接地ループが成立しているか[2]
- 値がおかしいとき、リード線の断線をテスターで確かめたか[4]
実際の作業は、各事業場の保安規程・作業手順書と、有資格者の判断に従ってください。
よくある質問
出典(このページのもとにした記事・動画)
本文の [番号] はこの一覧に対応しています。詳しい経緯や写真は、書いた技術者本人のサイトでお読みください。
- [1]接地抵抗測定とは?原理、基準、目的、測定方法でんきメモ (memo-labo) / 2012年1月1日
- [2]クランプアーステスタ・多重接地専用、原理、使い方でんきメモ (memo-labo) / 2021年10月26日
- [3]D種接地 簡易測定法 2電極法でんきメモ (memo-labo)
- [4]接地抵抗計が壊れた?そんな時の確認方法でんきメモ (memo-labo)
- [5]補助接地極を苔に挿しました。点検日和 / 2012年6月11日
- [6]屋上キュービクルや地下電気室での接地抵抗測定でんきメモ (memo-labo)
- [7]補助接地極でんきメモ (memo-labo)
- [8]接地抵抗測定ぽんぽんタイガー(YouTube) / 2021年4月14日
- [9]HIOKI接地抵抗計FT6031-50 ゼロアジャストとある電気管理の位相 / 2025年7月18日
- [10]メガー・デジタル接地抵抗計の校正試験Denkikanri3y's Blog / 2025年3月1日
- [11]接地抵抗測定の際、機器側と極側を繋いだ状態で測定しても良い?でんきメモ (memo-labo)
- [12]請負年次点検でのあれこれとある電気管理の位相 / 2026年9月29日
- [13]接地抵抗計 回せるアナログが減っているとある電気管理の位相 / 2025年2月8日
- [14]2025年1月受託した測定器計器校正とある電気管理の位相 / 2025年2月10日